米国と日本と離れた2年間の“別居婚”を経て、妊娠7ヶ月でアラスカへ移住。前回は少し変わった? 欧米風のベビーシャワーについてお送りしました。

第3話の今回は、身体より心の回復に時間のかかった異国の地での「出産体験」についてお伝えします!
異国の地で選んだ「理想の出産」とは?

大きなお腹を抱えて太平洋を渡り、左右も分からないまま異国の地で出産することに。

診察を受けた産婦人科医に紹介され、ひとまず夫と“マタニティークラス”に参加しました。

そこで、講師の方に、「どんな出産にしたいか、医師や看護婦に手紙を渡すといいですよ」とアドバイスを受けます。

その夜、それまで漠然と描いていた筆者の思う“理想の出産”を、具体的に考えてみました。

「限りなく自然に近い出産をしたいです。硬膜外麻酔や促進剤などの薬剤を使わず、会陰切開も避け、出産後はすぐに母乳をあげ、母子同室で新生児と一緒に過ごしたいです」

そう記した手紙を何枚か印刷し、病院へ持っていくバックに詰めました。



赤く染まるシーツで出産幕開け!

予定日の1週間前、出産は“破水”から始まりました。

夫の運転で真夜中の病院にたどりつきます。陣痛は、まだお腹の張りと生理痛レベル。ひとまず朝になるまで休むよう言い渡されます。

担当の病院スタッフに用意した手紙を配り、照明を落とした病室のベッドに横になりました

事前に聞いていたように、「妊婦は吐いてしまうことがある」ため、食べることは一切許されず、腕には栄養素を確保するための点滴の管。

微弱陣痛と出産への気分の高まりで眠れないまま明け方になり、朝陽に照らされた自分の身体を見て、息を呑みました。

腕の周りのシーツが真っ赤にそまり、床にも血がたまっています。

「うわぁー!」

という声に隣のソファで寝ていた夫も飛び起き、すぐに看護師を呼びに行きました。

「あらあら、出産前から随分と血を失っちゃったわね」

と言いながら点滴針を腕に入れなおす看護師を、血の気の引いた表情で眺めていました……。
「理想の出産」なんて吹っ飛ぶ陣痛の苦しさ

「破水後24時間以内に出産できなければ、細菌感染を防ぐため帝王切開になります」

と、朝になりやってきた担当医から説明を受けました。

そこで、医師のすすめる、点滴を通して陣痛促進剤を投与することに同意しました。

痛みが徐々に増していきます。“マタニティークラス”で学んだ痛みを和らげる姿勢やリラックス法を試し、何とか持ちこたえます。

それでもまだ進みが遅いと、午後になって促進剤の量が増やされていきました。

強烈な痛みが、数分間隔でやってきます。必死の呼吸法も、“過呼吸”を心配する看護師に止められ、痛みを逃す数々の方法も、もはや何の効果もありません。

想像を絶する痛みに、のた打ち回りました。付き添う夫の腕には、私の爪の跡に血がにじんでいます。

あまりの痛さに「硬膜外麻酔を打ってください!」「どうか帝王切開にしてください!」と叫んでいました。



ところが、どんなに嘆願しても、“自然出産志向の手紙”を配ってしまったため、麻酔はやってきません……。

1日中寝れないまま、飲まず食わずで体力もなく、意識も朦朧としたなか、身体を切り裂く痛みだけが鮮明に続きました。心身ともに限界でした。

朝から始まった陣痛ですが、夜9時近くになってやっと、子宮口は全開ではないものの、赤ちゃんが下がっているとのことで“いきみ”始めます。

「会陰切開するとすぐに出でてくるよ。どうする?」と聞く医師に、「お願いしますッ!」と即答していました。

こうして破水から21時間後、真っ赤な長男を、ぎこちなく抱きました。それまで感じたことのない不思議な感覚が、こみ上げました。

産後、身体の痛みより心の痛みを癒すことの方が、難しかったのです。
心の傷が回復するなかで実感した3つのこと

source:https://www.shutterstock.com/
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描いていた“理想の出産”とはかけ離れた“現実の出産”。

そして何よりも、「この痛みがなくなるなら何だってする」そう思った自分を受け入れるのに、随分と時間がかかったのです。

その後の4人の出産とは、この最初の出産の傷が癒される過程でもありました。傷が回復するなかで、筆者は以下の4つのことを思いました。



(1)痛みへの耐性は人それぞれ

私自身、「陣痛の痛みに耐えられないなんて、母として恥ずかしい」と思っていました。しかし、そんな話をする筆者に、アメリカ人の友人の言葉が刺さります。


「何言ってんのマイコ、麻酔なしで歯を抜く人なんていないじゃない? 出産だって同じよ」

「痛みを耐えてこそ理想の母」というプレッシャーを、「それもひとつの考え方ね」と軽くしてくれました。

「身体的な痛みへの耐性が強くない女性もいる、自分はそのひとり」と認め、前を向いて歩き始めることができました。



(2)自然なお産がしたいなら、普段の生活も自然志向にすべき?

自然とかけ離れた生活を送りながら、お産だけ自然に、というのも無理があるのではないでしょうか。

季節や太陽の移り変わりを肌で感じつつ畑仕事に身体を動かす、そんな暮らしをしているのなら、難なく自然志向のお産も進むでしょうが、無理があります。

できる範囲で、以前より自然に触れる生活を心がけるようになりました。



(3)どんな出産でも「貴い命の誕生」に変わりなし!

「理想の出産」からかけ離れていようが、どんな出産も、かけがえのない命の誕生に変わりはありません。

過去よりも、目の前の赤ちゃんを見つめて、新しい命の誕生を、そしてママとなった自分を祝ってやりたいですね。


引用元:
初出産は「血の海」!陣痛に耐えないと母失格?【地球の最北で子育て(It Mama)