病気治療のために卵巣を失い不妊となった女性が、幼い頃に冷凍保存していた卵巣組織によって妊娠出産したという驚きのニュースが入ってきた。卵巣を失った女性が、第二次性徴期前に保存した卵巣組織で妊娠したケースは世界初とみられる。英「Independent」紙や「BBC」などの多くの海外メディアが報じている。


■9歳の時に卵巣摘出→冷凍保存→24歳で出産!

 今回、驚くべき経緯で出産を遂げたのは、ロンドンのポートランド病院で不妊治療を受けていたモアザ・アルマトローシさんだ。ドバイ生まれの彼女は現在24歳で、生まれつきベータサラセミアという重度の血液疾患を患っていた。9歳の時、モアザさんは骨髄移植と化学療法を受けるために卵巣を摘出、それを冷凍保存した。

Moaza_3.jpgイメージ画像:「Thinkstock」より

 骨髄移植の際に行われる放射線療法や化学療法は、生殖器へのダメージが大きく、男女を問わず不妊症になってしまう可能性が高い。そのため、最近では治療前に患者の精子や卵子を採取して凍結保存するケースも多い。だがモアザさんの場合、治療開始がまだ第二次性徴期前だったため、卵子を採取して凍結保存する方法はできなかった。そこで彼女は、2つある卵巣の1つを摘出するという思い切った手段を選んだのだ。

 その後、化学療法の副作用によって体内に残るもう片方の卵巣はダメージを受けて早期閉経してしまい、モアザさんは若くして子どもを持てない体になってしまった。しかし、21歳になったモアザさんに、医師は凍結していた卵巣組織の移植を提案した。モアザさんの体内に残っている機能を失ったもう片方の卵巣に、かつて保存した組織の一部を移植することで、ホルモンの生産や排卵機能が回復するという見込みだった。

 医師の試みは見事成功し、モアザさんのホルモンレベルは妊娠・出産が可能なレベルまで回復、採卵や体外受精も可能となった。そして今月13日、ついにモアザさんとそのパートナーであるアフメドさんの間に元気な男の子が誕生した。

■不妊治療に劇的進歩か!?

 卵巣組織の冷凍保存と再移植で、初めて出産に至ったのは2004年、ベルギー人女性のケースである。今回は、第二次性徴期前に採取した卵巣組織で出産した世界初のケースとなるという。また、重度のベータサラセミア患者における初めての症例でもある。

 モアザさんのように、病気の治療によって不妊になってしまうケースは多い。治療に先立つ卵巣の摘出と冷凍保存、未来の再移植という技術は、多くの若い患者やその家族に希望を与えるだろう。また、健康な卵巣組織の移植で機能を失った卵巣機能を回復できるなら、いずれは卵巣を切除・保存せずとも、iPS細胞などによる再生医療も可能になるかもしれない。そうなれば、病気以外でも、高齢などさまざまな理由から不妊に悩む人々の福音となるだろう。現在のように他人の卵子や精子の提供を受けずとも、自分の遺伝子を引き継いだ子どもを作れる可能性が高くなる。自分の子どもを持ちたいという普遍的な願いを叶えるため、不妊治療は日々進化しているのだ。



引用元:
【世界初】9歳で卵巣摘出→冷凍保存→24歳で再移植&出産! 不妊治療の最前線がヤバい(TOCANA )