妊娠や出産、育児休業などを理由に職場で不当な扱いや嫌がらせを受ける「マタニティー・ハラスメント」(マタハラ)の防止措置が、来月から企業に義務付けられる。安心して働ける職場づくりに向け、事業主だけでなく職場全体で防止への意識を共有しながら実効性を高めていきたい。

 男女雇用機会均等法は、妊娠や出産を理由とする解雇、降格などを禁じている。育児・介護休業法も子どもの看護休暇や短時間勤務、深夜残業免除などの制度を利用した従業員が、不利益を被る扱いをしてはならないと定めている。

 しかし、マタハラ被害は後を絶たない。2015年度の相談件数は全国で4269件と過去最多だった。秋田労働局によると、県内でもマタハラ相談は年間40〜60件寄せられている。

 厚生労働省が昨年実施した初の実態調査では、働いた経験がある20〜40代の女性のうち、妊娠・出産した派遣社員の48%、正社員の21%が「マタハラを経験した」と答えるなど深刻な状況が浮かび上がった。マタハラ行為をしたのは直属の男性上司が19%、直属の女性上司が11%、同僚・部下では男性5%、女性9%となっている。

 こうした実態を受け、国は男女雇用機会均等法と育児・介護休業法を改正し、マタハラが起きないよう防止対策を講じることを義務化した。

 改正では、上司や同僚によるマタハラを防止対象に盛り込んだのが特徴だ。防止の具体策としては相談体制の整備のほか、マタハラ行為に厳しく対処する方針を就業規則で設けたり、書面で社内に周知したりすることが挙げられる。育児休業を取得する男性に対する嫌がらせなども防止対象となっている。

 妊娠、出産などで人手が欠ければ、その分をカバーする他の人の負担は増す。だが、子育て支援などによって女性が活躍できる職場環境を整えていくことは、企業が人材を確保する上で重要になっていることを認識しなければならない。

 育休などを利用する従業員の多くは職場に「申し訳ない」という思いを抱いており、その気持ちをくみ取って対応したい。マタハラ対策を定めるだけでなく、制度を利用しやすくするように職場全体で意識を高めていくことが大切だろう。

 本年度の県民意識調査で県政の重要課題に挙がった上位二つは「若者らの就業支援や雇用環境」「出産や子育てしやすい環境」だった。こうした県民の要望に応えるには、行政はもとより企業も率先して取り組んでいくことが求められる。

 育児・介護休業法は、介護休業取得者らに対する不利益な扱いも禁じていることを忘れてはならない。高齢化が進めば、介護はより差し迫った問題になっていく。出産・育児に加え、介護が必要な家族のいる従業員への配慮も一層重要になる。



引用元:
社説:マタハラ防止 職場全体で意識共有を(秋田魁新報‎ )