◇「直った」笑顔やりがい20年 大津、近江八幡
ボランティアが玩具を修理する「おもちゃ病院」が、20年以上にわたって県内で続けられている。おもちゃの種類は時代とともに変わっているが、大切な品々をよみがえらせてほしいと、訪れる人は今も絶えない。(北瀬太一)
「ボタンを押しても音が鳴らなくなりました」「無線操縦の車が動かなくなって困っています」
毎月第2土曜、西武大津店(大津市)で開かれている「おもちゃ病院」には、“診察”開始直後から、黒いピアノのおもちゃやバスの模型を抱えた親子連れが集まる。“医師”を務めるのは、会社を退職した人や機械を扱うのが好きな高齢者ら。毎回10人ほどが状態を聞き取って、手際よく壊れた箇所を修理していく。
まぶたが開かない赤ちゃんの人形を直してもらった市内の石田雅伸さん(32)は「長女のお気に入りの人形。元通りになって感謝の気持ちでいっぱいです」と感激した様子。10年以上、医師を続ける元県職員の三田村治さん(69)(同市)は「機械いじりが好きで、趣味のようなもの。子どもに喜んでもらえるし、楽しい」と、やりがいを語る。
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県内でおもちゃ病院の取り組みが始まったのは、1994年に遡る。同市の児童養護施設で子どもと遊ぶボランティアをしていた奥村寿朗さん(80)(同市)が、当時の理事長から「おもちゃを乱暴に扱う子どもがいる。何とかならないだろうか」と相談を受け、修理する様子を見てもらうことでモノを大切にする心を養おうと、施設内で始めた。
その後もボランティアを募って活動の場を広げ、奥村さんは“院長”として医師の指導にあたってきた。
診察は「病状」や「壊れた理由」などをカルテに記入してもらうことから始まる。その後、医師が問診をし、おもちゃを分解。壊れた箇所が分かると、はんだごてや接着剤、ペンチなどを使って、さびを落としたり、銅線を付けたりして修理を進める。1時間ほどで終わることが多いが、すぐに直せないおもちゃは“入院”してもらい、一時的に預かる。
遊び慣れたおもちゃが分解されて泣き出す男の子、毎晩一緒に寝ていたぬいぐるみの入院が決まり、寂しげな表情を浮かべる女の子、誕生日に孫からもらった手作りの時計が直り、涙を流して喜ぶ高齢女性――。「おもちゃへの思い入れは一人ひとり違う。何とか直してあげたい、という思いで長年やっている」と奥村さんは言う。
活動を始めて20年余り。これまで参加した医師の数は100人を超え、軽く数千点以上を修理してきた。現在は西武大津店のほか、同市の膳所ふれあいセンター(毎月第3土曜)、近江八幡市総合福祉センター(毎月第4土曜)などで開く。
スマートフォンや機器を使ったゲームが遊びの主流になるなど、おもちゃの種類が変わり、直せないこともある。医師の高齢化も進み、新たな担い手の育成も課題だ。
それでも奥村さんは「おもちゃ病院を続けることで、モノを大切にする人が増えるはず」と力を込める。「大人になってもその心を忘れず、次の世代に伝えてもらえたら」。そう願って、活動を続けるつもりだ。
<おもちゃ病院>壊れたおもちゃを部品代などの実費を除き、無償で修理する。全国各地で開かれており、日本おもちゃ病院協会(東京都)によると、協会員として修理に携わる医師は10〜80歳代の約1370人(3月末現在)。協会員以外も活動する人は多い。
引用元:
おもちゃ病院 親子の味方 (読売新聞)