毎年、冬の足音が聞こえてくるこの季節、わが家にはある一通の封書が送られてくる。『卵子凍結保存更新のご案内』だ。
妻は5年前に約3年間、不妊治療を行っていた。その甲斐あり2年前に男の子を授かったのだが、そのとき凍結した卵子をそのまま保存。
以来、去年一昨年と「第二子をつくるご予定は?」「卵子はちゃんと凍結してありまっせ」とばかりに、クリニックから通知が来るのだ。
「卵子凍結は保存更新」欄にマルをつける本当の理由
妻は出産した2年前でも、当時41歳の高齢初産だった。今ではもう43歳、第二子が欲しい気持ちはもちろんあるが、これから再び体外受精をして妊娠に至ったとしても、妻は44歳での出産となる。
体力的にとても厳しいものになると予想されるので第二子は考えていない。しかしクリニックからのお知らせには「卵子凍結は保存更新」欄にマルをつけて返信した。
それはなぜか? 単純に「廃棄」欄にマルが付けられないのだ。
「精子凍結」という選択
さて卵子凍結なるものは有名だが、精子凍結というのもある。
これは抗がん剤などによる副作用で精子をつくる機能が低下してしまうため、精子凍結をし、不妊を阻止するのだ。しかしこの精子凍結というものを知っている男性が、いくらいるだろう。
……というのも実は、僕自身が精子凍結という存在をつい最近知ったのである。拙著『俺たち妊活部』を書くにあたって不妊治療のことを猛勉強したが、治療をやっている最中は、人工授精と体体外受精の違いすら知らなかった。
そしてそれは僕だけでなく、101人の不妊治療男性を取材したがほとんどの男性が僕と同じだったのです。つまり男性の多くは、不妊治療においては「意識低い系」なのだ。
「いかに妊娠させないか」だけに注意を注いできた男性は、「まさか俺が種ナシなんて」と100%信じているに違いないのだ。
もし不妊に悩む方がいたら、ぜひクリニックに行っていただきたい。それもカップルでの来院がマストだ。嫌がるバカな旦那(失礼!)がいたとしても、「その後に映画デートしよ」とか何でもいいので理由をつけ一緒に行こう。
そうやって男性にも当事者意識を植え付け、もし男性不妊という結果が出ても怖がる必要はない。精子凍結などの高度医療も、2016年の日本にはある。
一番怖いのは、“知らなかった”から“できなかった”ことなのだから。
“命の保険”をかけている
妻は3年間、それこそ身も心もズタボロになりながら、やっとこさ妊娠に至る健康な卵子をひねり出したのだ。つまりいまクリニックでカッチカチに凍ってる卵子は、当時の妻の象徴。それを「廃棄」って。モノじゃないんだから。
そしてもうひとつの大きな理由が、いつ心変わりするかもしれないということ。子育てが少し落ち着き「やっぱり第二子ほちい!!」となっても、『妻は妊娠しにくいからだ』と3年前に証明されてしまった以上、それからさらに老けたいま、自然妊娠できるとは考えにくい。
しかし医学の進歩で41歳採卵時の卵子が使えるのだ。命の保険といってもいい。ゆえに、希望を廃棄することなどできない。きっと生理があがるまで、毎年更新していくのであろう。
引用元:
卵子だけじゃない!「命の保険」精子凍結の世界(It Mama)