先日、母親が子どもを橋から落としたという事件や、行方不明になっていた子どもは、実は親が海に捨てていたという事件などがニュースが報道されました。

ここ連日、見るだけでつらくなるような、小さな子どもの虐待死の報道が続き、とても痛ましい気持ちになります。

虐待をしてしまう母親を加害者として責める人たちもいますが、でも、ほとんどの場合、虐待をする親が特別に“異常”な人であるわけではありません。

普通の母親が、孤独な育児、「孤育て」によって追い詰められた結果であることが多いのです。

人間はもともと、母親1人で子育てをすることはできません。

なぜなら、人間は、“共同養育”という複数の人間が助け合った、チームでの子育てを行ってきたのです。
昔の子育てはどうなっていた?

日本が鎖国を解いた19世紀後半のころ、初めて“外国の人”が鎖国後の日本に訪れて文書や絵を残しました。

それらを集めた『逝きし世の面影』という本の『子育て』という章には、母親だけでなく、父親や、年長の子ども達に世話をされている赤ちゃんの様子が描かれています。

この本を教えてくれた子育て支援の大先輩は、「私が小さい頃もこんな風にみんなが子育てしてたんだよ」と、戦後の日本の子育てについても教えてくれました。

もともと日本では、大家族や地域のみんなで子育てをしていたのです。



また、京都大学の霊長類研究所の松沢教授は、アフリカで昔ながらの狩猟採集をして暮らす集団の子育てを紹介して、人間の子育ては集団での“共同養育”を行うという特徴があると言っています。

つまり日本だけでなく、人間そのものも、脈々と“共同養育”をしてきたのです。



「良い母親」像はここ数世代の幻想

日本では、高度経済成長期の戦後の20世紀半ばから、核家族化とともに、“母親が1人で立派に子育てをする”という価値観ができました。

1人で立派に子育てと家事をして“良い母・良い妻・良い嫁”になるという幻想を持った新米の母親は少なくありません。

私自身も初めての子育てを、気負って1人で抱え込んでしまい、何度もつらい思いをしました。

でもそのたびに、夫や保育園や行政の支援団体などに助けてもらって、何とか乗り切ることができています。

時代にあった子育てをしよう

高度経済成長が終わって、女性も働くようになった今、母親が1人で立派にする子育てするという“孤育て”は、無理で不自然です。

本格的に改めなければなりませんし、子育てを今の時代に合った形の“共同養育”に変えていきましょう。

そのためには、まず母親が、チームでの子育てが当たり前という価値観に変わることが大切です。

立派に1人で子育ても家事もするという、母親の“強さ”は、人間としてかなり無理のあることなのです。

1人で抱えこまず、夫、親類、行政、支援団体、保育園……誰でも、どこでもいいので、頼ってみてください。

この時代に母親になった私たちは、誰かに頼って、チームで子育てをするという“強さ”を身につけましょう。




引用元:
虐待はなぜ起きる?「孤育て」に追い詰められないための心得(It Mama)