両親のどちらかが外国出身のいわゆる「ハーフ」の子どもは、国内では新生児の50人に1人にあたる年間約2万人が誕生している。東京都在住のコラムニスト、サンドラ・ヘフェリンさん(40)もハーフで、日本人なのに外国人として扱われ、悩んできた一人だ。伝えたい、ハーフの本音とは。

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 「来日して、私は何ておめでたい人間だったのかと痛感しました」

 日本で暮らして19年になるサンドラさんは、ドイツ人の父と、日本人の母との間に生まれた。ドイツのミュンヘンで育ち、日本語補習校に毎週通った。日本人の友達と「あさりちゃん」や「ドラえもん」などの漫画を交換しあった。

 14歳からは、夏休みに一人で日本に帰り、祖父母の家で過ごした。「当時のドラマにも詳しいですよ。『101回目のプロポーズ』とか」

 1997年、母が生まれた国で暮らそうと思い、日本へ。日本国籍を持ち日本語を話し、文化に親しんできた自負もあった。「当然、日本人として生きられると思っていました」。ところが、初対面で戸籍上の「渡部里美」を名乗ると、相手は不思議そうに「ご主人が日本人なんですか?」「帰化されたんですか?」「外国の名前はないんですか?」と聞いてきた。印鑑証明を取ろうと区役所に行けば、職員に「外国人登録証はあちらですよ」と言われた。

 私は日本人ではないのか……。疎外感に悩む日々を過ごす中、同じ立場の人が交流する「ハーフの会」に参加。語り合ううち、多くのハーフが似た経験をしていることに気づいた。

■外見で決めつけ

 「髪の色が変」「なんで国に帰らないの」。外見などの違いを理由に、日本の学校でいじめを受けた人も多い。

 大人になっても「え!? 英語話せないの?」といった何げない一言に傷つくことがある。顔つきが欧米系に近いからといって、日本で育ったハーフが英語を話せるとは限らない。「『あーそっか。私もできないし、そうだよね』とそのまま受け止めてほしい」と語る。

 サンドラさんが著書であえて「ハーフ」という言葉を使う理由もそこにある。「例えばハーフを『ダブル』と言い換えることもできますが、それは『二つ』や『二倍』という意味。日本だけで生まれ育ったハーフにとっては、『ダブル』の言葉は重荷になる。伝わりやすく、より適切な言い換えができないのが現状です」という。

 著書では、ハーフではない日本人のことを「純粋な日本人」という意味を込めて「純ジャパ」と呼んでいる。あくまでも一部ではあるが、ハーフに対し、「好奇心旺盛で質問好きの人」はいる。初対面でも「ご両親はどこで出会ったんですか」「国籍はどちらですか」などと、プライバシーに踏み込んだ質問をされ、戸惑うことも。「純ジャパ同士の会話なら、まず初対面でそんなことは聞きませんよね」

■事情や悩み様々

 一方で、ハーフの事情も様々だ。サンドラさんは、一目でハーフだとわかる自分のことを「顔面暴露系ハーフ」と呼ぶ。欧米系の顔つきだと一目瞭然で、「開き直って暮らすしかない」。これに対し、中国や韓国出身の親を持つハーフは本人が明かさなければ気づかれにくい。その分、恋人や友人に伝えた時、どんな反応をされるのか不安になりがちで、「より深い悩みを抱えている人も少なくない」という。

 サンドラさん自身は「苦労もあるけど、ハーフでアンハッピーと思ったことはない」と話す。日本でもドイツでも、空港に降り立つと「帰ってきた」と思える。人と接するときに、相手の事情を想像する習慣も身についた。

 これからも日本に根付いて暮らしたいと思っている。「私、街で道を聞かれるとすごくうれしいんです。あ、特別視されてないんだって」(


引用元:
ハーフ、新生児の50人に1人 「外国人扱い」に戸惑い(asahi.com)