10月は乳がんの早期発見、早期治療を呼び掛ける「ピンクリボン運動月間」。最新のがん統計では、おおよそ11人に1人が乳がんにかかるとされるほど女性にとって身近な病気だ。早期発見であれば、8割以上が治ると言われるが、受診率が80%を超える欧米諸国に比べ、日本国内の受診率はまだ低い。県内の罹患(りかん)者数の特徴や検診の早期受診の重要性などについて、那覇西クリニックまかびの上原協(かのう)副院長に聞いた。

(新垣梨沙)


「検診を受診することで、自己検診では見つけることのできない腫瘍を早期に見つけることができる」と語る上原協医師

―県内の乳がん罹患者の推移を教えてほしい。

 「県内では、毎年平均して800人が新たに乳がんになっている。このうち、半分ほどはステージ0や1の初期で見つかる人だが、県内は全国に比べて、他の臓器や骨などに遠隔転移しているステージ4の患者が多い傾向がある。県がん登録集計から見ると、全国の割合4.9%に対して、県内は7.8%。およそ1.5倍だ」

―ステージ4が多い背景は。

 「患者として来院する多くの女性が、家族や仕事を優先させて自分のことを後回しにしている傾向が強いと感じる。乳房にしこりを自覚しているにもかかわらず、受診をためらっているうちに症状が進行してしまうケースも多く見受けられる。検診が面倒臭いと思う人や、自分の健康に関心のない人も一定数いる」

―データから見た乳がんの特徴はあるか。



 「県内女性のがん罹患割合(2011年)を見ると、乳がんは1位だが、死亡率は大腸がん、肺がんに次いで3位。つまり、早く見つけることさえできれば、乳がんは治りやすい。検診で見つけた人と自己検診で見つけた人とでは、ステージが異なるというデータもある。検診では触っても分からないレベルの腫瘍を見つけることができるので、検診を定期的に受け、ステージが早い段階で見つけることが何より重要だ」

―欧米諸国と日本との違いはあるか。

 「欧米は1990年あたりから、乳がんの死亡率が下がってきたが、日本は、2010年を超えても変わらず右肩上がりだ。欧米と比べても治療のレベルは変わらず、薬の認可が遅れるドラッグラグも大きな影響はないと考える。一番の違いは検診の受診率だ。欧米は検診受診率の向上に力を入れたことで80%台以上に上がったが、日本は35%前後と依然として低く、それが死亡率低下につながらない原因ではないかと個人的には思っている。欧米にならって、早いうちから乳がんの予防や知識について教育を受けられるようにする必要がある」

―県内ではがん治療を乗り越えたがんの経験者「サバイバー」の活動も盛んだ。医師の立場から、サバイバーの活動の意義はどこにあると感じるか。

 「患者にとって、医者と1対1の関係というのは緊張し、疲れることもあるかと思う。こうした時に、患者側に立つサバイバーの存在は大きいと感じる。告知、治療を乗り切るこつなど、医療者から伝えるよりも同じ病気を経験した人の話が染み入ることもあるだろう。病院としても、サバイバーの力を借りて、新たに乳がんになる人の心のケアに当たれたらいいと思う。同じ仲間だという形で関わってもらえるとありがたい」


引用元:
沖縄県内の乳がん「ステージ4」での発見多く 自分優先し、検診受診を(琉球新報)