産科の医師1人が1年間に担う出産の件数を各都道府県ごとに調べたところ、東京や大阪に隣接する埼玉、千葉、兵庫などで医師の負担が重く、負担の少ない県と比べて最大で2.7倍の格差のあることが、日本産婦人科医会の調査でわかりました。医会では「妊婦の多い大都市近郊で、産科医が不足している実態が明らかになった。医師の適切な配置など対策を取ってほしい」と話しています。




日本産婦人科医会は、ことし1月時点の全国の産科の医師の数と去年1年間の出産件数を基に、産科の医師1人が担う出産件数を都道府県ごとに調べました。
その結果、産科医1人当たりの出産件数が最も多かったのは埼玉県で、年間182件に上り、最も少なかった山形県の68件の2.7倍になっていました。次いで多かったのは佐賀県で164件、続いて千葉県が161件、兵庫県と沖縄県が149件、広島県が147件などとなっていて、大都市の東京や大阪に隣接する県で医師の負担が大きい実態がわかったとしています。
また、全国の産科医の数は、平成21年の7290人から毎年増え続け、去年は8264人となっていましたが、ことしは8244人と初めて減少に転じたこともわかりました。これは、ことし産婦人科医を目指す若い医師の数が364人と少なく、退職する産科医も多かったことが原因だということで、日本産婦人科医会では、平成22年度から産婦人科が臨床研修の必修科目から外れたことも影響しているとしています。
調査を行った日本産婦人科医会の中井章人日本医科大学教授は「産科医療は全国的にも厳しい状態が続き、地方の自治体で出産できる病院が少ないことなどが問題になっているが、一方で、埼玉や千葉など大都市近郊では、地方に比べ妊婦の割合が多く、産科医が不足している実態が明らかになった」と話しています。このうち埼玉県では、おととしから県内で受け入れができない場合、東京都と連携して都内に搬送する対応を取っていますが、中井教授は「出産は緊急の場合があり、妊婦や赤ちゃんの命に関わる。広域搬送は本来のあるべき姿ではない。負担が重い状態が慢性化すれば、提供できる医療が不安定になる可能性があり、安全なお産のためには、産科医全体の数を増やし、適切に配置する対策を取るなどしてほしい」と話しています。


引用元:
産科医1人当たりの出産件数 最大で2.7倍の格差(NHK)