出産を取り扱う施設のない甲斐市で、産前産後のケアに重点を置く産婦人科の診療所が3日、開設された。市では、診療所を相談の拠点として妊娠期から支援する。分娩(ぶんべん)は山梨大学医学部付属病院(中央市)で行うが、診療所では通常の診察に加えて助産師らが母親の相談を受け付ける。同病院の平田修司副病院長(58)は、「一つの診療所に市の相談機関が入り、大学とも連携するのは全国的に珍しいのでは」と話す。【田中理知】


 人口減対策で甲斐市が昨年度から進める子育て支援事業「ネウボラ推進プロジェクト」の一環。ネウボラはフィンランドにある出産、子育て支援の拠点を指す。市は女性が安心して妊娠、出産、育児できるよう環境整備や切れ目ない支援を目指す。

 市と同大は今年、自然環境や福祉などの分野で交流を図る協定を締結。協定に基づき、大学側は、県内で開業する意向があった同大大学院産婦人科学教室助教の中村朋子医師(48)を市内に招くことを提案した。中村医師は、「県内でも産婦人科はまだ少ない。その一つとして役割を果たすことができれば」と意気込む。

 診療所「このはな産婦人科」(甲斐市西八幡)は、延べ床面積約490平方メートルの2階建て。1階には二つの診療スペースと、市の事業として、保健師や助産師が産後の母親からの相談に乗る「産後ケア室」なども備える。臨月までの妊婦健診や子宮がん検診も受けられる。胎児の様子をチェックできる超音波診断装置などを備え、大学病院でスムーズに出産ができるよう情報交換する。初日の3日は午前中だけで7人が訪れた。

 市の事業は、市民が対象。産後1カ月半の全ての母親と子どもを毎週1回、10組ずつ集める。育児不安の解消に努めるほか、必要があれば個別相談や医療機関につなげる。これまでは保健師が個別訪問するなどしてきた。

 県医務課によると、県内で出産を取り扱うのは04年に14病院、10診療所だったが、16年は7病院、8診療所まで減少している。同大によると、全国的な産科医不足が要因の一つで、大学病院を含む大病院に取り扱いが集中する状態が続いているという。

 平田副病院長は、「お産ができる場所も減ったことが少子化に拍車を掛けてきた。地域の出産施設として、大学も全面的にバックアップしたい」と話す。甲斐市健康増進課は、「市の相談事業と医療との連携で、産後の早い時期から切れ目がない対策にしたい」と期待を込めた。

 問い合わせは同診療所(電話055・225・5500)。


引用元:
甲斐市に 産前、産後ケアの拠点 市が支援、山梨大病院と連携 /山梨(毎日新聞)