今回もADHD(注意欠陥・多動性障害)の特性と子育てがテーマです。前回は、ネガティブな側面からみましたので、今回はADHDの特性をプラスに生かすとこうなる、というポジティブな例をご紹介します。
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ADHD特性と子育て
子どもが小さいころの子育ては本当に大変です。子どもが起きている時間は、電話するのもままなりません。それでも、かかってたきた電話に対応したり、宅配便の受け取りに玄関先で応対したりしなければならないといったことが、意図せぬタイミングで起こります。トイレに行くのだって、化粧を終えるのだって、ご飯を作るのだって、とにかく一筋縄ではいきません。子どもの「ぐずり」や色々な要求で邪魔されるからです。しかも何度も。何度も何度も中断させられます。
もーー!子育て中には、トイレにすらいけないのか!」
私も何回もつらくなり、イライラしました。
子育て中の親は、何度、作りたてのラーメンをのびずに食べ終わるのをあきらめたことでしょう。何度、寄りたい店に後ろ髪を引かれながら、子どものペースで街を歩いたでしょう。何度、見たいテレビや入りたいレストランをあきらめたでしょう。
「親なら当たり前」
子どもが大きくなり、のど元過ぎればそう言えるのでしょうか。やはり渦中のつらさはなかなかのものがあります。子どもに中断され、自分のしたいことができず、下手すると夜泣きでよく眠れていない状況を想像してください。そりゃ誰でもイライラすると思いませんか。ADHDでなくても、です。
さらにADHDをもつ親は、子育ての
・すぐには結果がでない
・毎日同じことの繰り返し
・自分の気持ちや、やりたいことを抑えながらやっていく
という側面に関して、大きな困難を抱えています。その結果、育児に疲れすぎ、やる気が起こらず放棄し、怒りを爆発させ、一貫性のない育児で子どもを混乱させがちになることがあります。
でも、子育てに、ADHDの次のような特性をプラスに生かす方法もあるのです。
@報酬遅延勾配が急(すぐに結果が出ないとだめ)
子どもの成長は年単位のものも多いかもしれませんが、たとえば自転車に乗れるとか、ひらがなが書けるとか、ひとりでお買い物に行けるとか、そうした行動レベルのものならば、わりと短期間に結果を得ることができます。
さらに、それらをもっと短期間に結果を出せる小さな目標に分解していくのです。(スモール・ステップの原理)
自転車の例でいけば、
・ハンドルとサドルを持って歩きながら自転車を押すことができる。
↓
・サドルにまたがり、足で地面を蹴りながら前に進むことができる。
↓
・上の状態で、スピードが出てきたときのみ、足を地面から2秒離して宙に浮かせる。
こんなふうに、到達するまでの中間目標をたくさん作るのです。一つずつクリアしていく達成感を子どもとともに味わえます。
もっと大きなお子さんにも使えます。
「進路をそろそろ考えなければ」という大きな事柄についても、複雑なほど、小さく分解して一つずつ落ち着いて取り組めばよいのです。こうして小さく分解してハードルを下げれば、ADHDの方の「あー、こんな課題、私にできるはずもないし、面倒くさすぎる。先延ばしちゃえ」となる癖を予防することもできます。
A新しいことに興味をもちやすく、繰り返しに退屈さを覚えてやる気が出ない。
自分がしようとしている子育てはどんなものでしょう。多くの人は、自分がしてもらった子育てを基準にしています。「親もこうしてくれたから、当たり前なことだ」とか、「親のようにはなりたくないから、自分はこうする」とか。反面教師にする人は意外に多いですが、それも含めて、やはり親は基準になります。
その「これはごく当然で当たり前」な子育て感を日頃はなかなか意識しませんが、これに縛られて自分を責めすぎている人が多いように思います。
「母は手作りの幼稚園バッグを作ってくれたのに、それができない自分はだめな親だ」このような感じです。
その固定観念をすっぱり捨て去るのはそう簡単ではありませんが、とらわれを緩めることができれば多少楽になります。
「子育てが退屈だなんて感じてはいけない」と自分を責めるかわりに、「そうよね。私は新しいものを好む特性がある。だから同じことの繰り返しの子育てには魅力を感じにくいのよね。」そう考えるのです。
そしてすかさず、「ならば、常に自分を退屈させない方法で子育てしよう」と切り替えてみるのです。
世の中にはありとあらゆる子育てメソッドがあります。子どもの理解の仕方から、対応の仕方、親自身の変化を促すものまで様々です。
子どもを対象とした行動分析のような専門的知識を身につけるのもよいでしょう。これまで混沌(こんとん)としていて、毎日繰り返しに思えていた育児に、法則や方向性が見え始めるでしょう。育児に対する手ごたえを得やすくなります。ペアレントトレーニングなどの名称で世の中に出ています。
子どもの力(論理的思考や認知機能、時間管理能力、運動機能など)をのばす各種ワークブックもたくさんあります。本屋の児童コーナーに立ち寄ればたくさん並んでいます。
こうした目新しいやり方を知っておけば、自分がもっている「子育てはこうあるべき」のような育児に関するとらわれから少し自由になり、飽きずに子育てに向かえるかもしれません。
自分のやる気を保つことのできる方法を探すことが大切です。こうあらねば、はいったん捨てましょう。自分が少しでも笑顔でいられる方法を探しましょう。
引用元:
ADHDの親の育児のコツ(朝日新聞)