九州大大学院医学研究院などの研究グループは27日、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)の原因となるムンプスウイルスがヒトの細胞に侵入し、感染する仕組みを解明したと発表した。同院の橋口隆生准教授は「抗ウイルス薬の開発やワクチンの改良につながる」と話した。

 グループは、エックス線を使った解析でムンプスウイルス表面にある「糖タンパク質」の構造を解明した。一方、コンピューター計算などからヒト細胞表面の「受容体」が3種類の糖からなると突き止めた。

 糖タンパク質と受容体は「鍵」と「鍵穴」の関係に例えられ、結合によって感染する。構造が明らかになれば、ウイルスに先回りして「鍵穴」をふさぐ抗ウイルス薬の開発に道が開ける。

 また、ワクチン接種を受けたり、以前かかったりした人でも、おたふくかぜに感染する原因の一端も判明した。

 一度感染すれば、体内にウイルスを排除しようとする抗体ができる。ところが、ウイルスの遺伝子型によっては、抗体が作用する部位のアミノ酸の配列が異なっていた。この場合、一度できた抗体が役立たないケースがある。

 おたふくかぜになると耳や顎の下が腫れ、髄膜炎や難聴といった合併症を起こすこともある。現在、抗ウイルス薬はなく、治療は対症療法だ。

 今回の成果は米国科学アカデミー紀要電子版に近く掲載される見通し。

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【用語解説】流行性耳下腺炎

 おたふくかぜとして知られる。九州大大学院医学研究院などの研究チームによると、国内では小児を中心に、毎年数十万〜100万人以上の患者が出ている。耳の近くの腫れや発熱が主な症状だが、髄膜炎や精巣炎、卵巣炎、難聴といった合併症を引き起こすことがある。感染力が強く、学校保健安全法では出席停止の対象となる。


引用元:
九大などの研究グループ、おたふくかぜの仕組み解明 (産経新聞)