10月から、全ての赤ちゃんがB型肝炎ワクチンを公費で受けられるようになります。しかし、B型肝炎という言葉が聞きなれない人も多いでしょう。実際、B型肝炎ウイルスに感染していても、その約9割の方は自覚症状がないとされています。B型肝炎はどんな病気なのか、なぜ赤ちゃんへの定期接種が公費対象となったのか、B型肝炎事情に詳しい弁護士の園田由佳さんに聞いてみました。




B型肝炎ワクチンを接種する前に知っておきたいこと


お母さんが感染していると母子感染の可能性が

B型肝炎ワクチンとは、B型肝炎ウイルスによる病気を防ぐためのものです。お母さんがB型肝炎ウイルスに感染していると、赤ちゃんは子宮の中やお産で産道を通過する時、B型肝炎ウイルスに母子感染する危険にさらされます。母体が保有するB型肝炎ウイルスが感染力の強いものであれば実に90%以上の確率で、また、感染力が弱い状態であっても約10%の確率で母子感染が起こると言われています。

新生児や乳幼児期にB型肝炎ウイルスに感染すると、免疫力が弱いために、身体からうまくウイルスを追い出せず、キャリアとなってその後、免疫力が強まった頃にウイルスを追い出そうとして肝炎を発症します。このようにして発症した肝炎は高い確率で慢性化し、さらにそのうちの一部は肝硬変や肝がんに進行することもあります。こうした肝がん等の発症から赤ちゃんを守るためのワクチンがB型肝炎ワクチンです。

B型肝炎ワクチンは2種類ある

B型肝炎ワクチンは、乳幼児期にきちんと接種すれば、ほぼ全ての人がB型肝炎に対する免疫(HBs抗体)を獲得することができ、将来の肝がん発症等を防ぐことができると言われています。では実際、どのようにB型肝炎ワクチンを接種すればいいかというと、母体がB型肝炎ウイルスキャリアである場合とそうでない場合とで、打つ種類や打つ時期が若干異なります。

そもそもB型肝炎ワクチンは、「高力価HBsヒト免疫グロブリン(HBIG)」と「B型肝炎ワクチン(HBワクチン)」の2種類があります。HBIGはB型肝炎ウイルスに汚染された時など緊急時の感染予防のために使用し、HBワクチンはウイルスにさらされる前の予防として用いられるものです。

母体がB型肝炎ウイルスキャリアである場合は、赤ちゃんが既にB型肝炎ウイルスにさらされている恐れが高いと考えられます。そのため、医療機関の指示する接種スケジュールに従って、生まれてすぐHBIGを接種するとともに、複数回HBワクチンを打つことになります。その他、母体がB型肝炎ウイルスキャリアではない場合は、生後2カ月頃から合計3回HBワクチンを接種することが推奨されています。




母体がB型肝炎ウイルスキャリアかどうかで、赤ちゃんへの接種の方法が変わる


ワクチンの定期接種はWHOの推奨事項

B型肝炎ウイルスは母子感染だけでなく、知らない間に感染してしまうことも多いウイルスです。そのためWHO(世界保健機関)は、1992年より全ての子どもたちに対して生まれたらすぐにこのワクチンを国の定期接種として接種するように推奨しており、多くの国では子どもたちに定期接種を行っています。

しかし、日本ではこれまで、WHOが推奨する全ての子どもに対するワクチンの定期接種をせず、母子感染するリスクの高い赤ちゃんに対してだけ、公費でのB型肝炎ワクチン接種を認めていました。ですが、2016年10月からようやく、全ての赤ちゃんがB型肝炎ワクチンを公費で受けられるようになります。ただし、対象は2016年4月以降に生まれた0歳児のみとされているため、生後2、3、7〜8カ月という標準的な接種スケジュールに従って、対象年齢を過ぎないうちにワクチンを接種することが望ましいでしょう。

これまでは赤ちゃんの話を中心にして説明してきましたが、B型肝炎は大人にとっても見過ごせない病気です。定期検査費用や給付金を国が「特別措置法」に従って支給するケースもあります。続いては、どんなケースであれば対象になるのか紹介していきます。


引用元:
赤ちゃんへのB型肝炎ワクチンは必要? 接種が公費になる今、知っておきたい事(マイナビニュース)