成長するにつれ出てくる子どもの「好き嫌い」。幼い頃からいろいろな食べ物の味を経験すると好き嫌いなく食べる子に育つということは分かっているが(※1)、これは何も生まれてからだけの話ではない。味覚の経験は、お母さんのおなかの中にいる頃からすでに始まっている。



□おなかの中で赤ちゃんはすでに味を学んでいる
 北アイルランド、クイーンズ大学ベルファスト校心理学科研究チームが行ったある実験によると、赤ちゃんたちはお母さんのおなかの中にいる頃から食べ物の味を覚え始め、そのときの経験が後の「好き嫌い」に関係してくることが分かった。

 実験では、妊娠している女性を、ニンニクを食べるグループと食べないグループに分け、生まれた子どもが8〜9歳になった頃に味の好みを調査した。すると、ニンニクを食べていた母親の子どものほうが、ニンニク風味のポテトをより好んで食べたのだ(※2)。



□妊娠中にニンジンを食べないと子どももニンジン嫌いになる?
 また、子どものニンジン嫌いの理由が分かる興味深い実験もある。出産後は母乳育児を行うとした妊娠中の女性を次の3組に分けて行った実験だ。

・A)妊娠後期にニンジンジュースを、授乳を始めて最初の2カ月は水を、3週間連続で週4日飲む
・B)妊娠後期は水を、授乳を始めて最初の2カ月はニンジンジュースを、3週間連続で週4日飲む
・C)どちらの期間も水を飲む

 赤ちゃんが離乳食を食べ始めてから4週間後、グループAとBの赤ちゃんは無味の離乳食を食べているときと比べて、ニンジン味の離乳食には不快な表情をすることが少なかった。

 母親から見ても、ニンジンに対して特に変わった反応を示さなかったグループCの赤ちゃんたちに比べ、グループAとBの赤ちゃんたちはニンジン味の離乳食を楽しんでいるように見えたという。(※3)。



□赤ちゃんが生まれる前に味を学ぶ理由
 妊娠中にニンニクを食べていた母親から生まれた子どもたちは、なぜニンニク風味を好むようになるのだろうか? その理由として研究チームは、胎児のときからニンニク味に触れることで味への親しみが増した可能性があると述べている(※2)。

 生まれてからの食べ物の選択は、全ての生物が生存するうえで非常に重要だ。自分にとって毒になるものを食べれば命を落とす可能性もある。そのため、お母さんのお腹の中にいるときから学習しておき、生まれてからに備えているのかもしれない。

 事実、胎内にいるときに経験しなかった食べ物に対して赤ちゃんは注意を払いやすく、あまり食べることもないのだという。胎内での味の学習はどんな脊椎動物の間でも見られることを考えても、味の学習がいかに重要なことか分かるだろう。

 赤ちゃんの味覚の決定は生まれてからのことではない。何でも好き嫌いなく食べる子に育ってほしいのならば、まずは妊娠中のお母さんが、好き嫌いなくいろいろな食べ物の味をおなかの子どもに経験させてあげることが大切だろう。

引用元:
赤ちゃんは胎内でも味を覚える にんじん嫌いを防ぐには妊娠中から!(日刊アメーバニュース)