昨年の8月から12月にかけて、子どもたちの間で「原因不明のまひ」が発生しました。

まだ全ての可能性は排除できませんが、可能性として“エンテロウイルスD68”が関与していることが示唆され、ニュースに取り上げられていました。

そこで今回は医学博士の筆者が“エンテロウイルスの症状と予防策”についてお伝えします。

川上先生



■原因不明のまひ、風邪との区別が難しい?

国立感染症研究所によりますと、115人は子どもを中心に33の都と府と県で、去年の8月から12月の間に手足などに“まひ”の症状が出て入院したと、全国の医療機関から報告されたということです。

明らかに感染症が原因ではない人などを除くと75人で、患者の一部からは“エンテロウイルスD68”が検出されていて、エンテロウイルスが流行していた去年9月にまひが起きた人が多かったということです。

また、現在もまひが残っている人が多くみられたとされています。

“エンテロウイルスD68”は風邪を引き起こす“ライノウイルス”と形が似ているために、最初は鼻水・咳・発熱などといった症状で風邪と間違えられることもあります。

しかし重症化すると喘息のような発作、呼吸困難などを伴い、肺炎を含む様々な呼吸器系症状を引き起こすこともあります。

また、今回話題となっているまひに関しても、日本のみならずアメリカなどでも確認されているために、現在解明が進められています。
■子どもたちが主に感染する理由は?

そもそもウイルスとは“生命体ではなく物体”です。生涯にわたって感染するウイルス数は100種類を超えると言われています。

ウイルス自体、菌と異なって生命体ではないわけですから抗生物質などが効きません。すなわちある種のウイルスを除いて“特効薬”が存在しません。

「子どもは風邪を引きやすい」といわれるのはここに関係してきます。一度ウイルスに感染すると“抗体”が出来あがることによって、通常同じウイルスには感染しないとされています。

しかし、子どもはまだウイルスに対する“抗体の絶対量”が大人と比べて格段に少ないということが1つと、発達段階では免疫が強くないので、ウイルスの生体侵入を容易にし、発症しやすくなります。

それにより“エンテロウイルスD68”も多くの大人では免疫が排除してくれるのに対し、子どもは免疫があまり強くないために感染しやすくなってしまうのです。

決して大人に感染しないというわけではなく、“免疫の差”によって感染しやすくなってしまうと言えます。



■原因不明のウイルス、対策・予防法はあるのか?


source:http://www.shutterstock.com/
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前述したようにウイルスが原因となりますので、確実な治療法はありません。

しかし、国立感染症研究所感染症疫学センター室長によると「ウイルス感染と麻痺の関係は調査中だが、子どもに発熱などの症状があって手足が動かしづらい時は、速やかに小児科を受診してほしい」とあります。

「風邪かな?」と自己判断してしまうと後々に重症化してしまう危険性もあるので、早めの受診をしましょう。

確実な治療法がない以上、やはり重要になってくるのが“予防”です。

エンテロウイルスD68の感染経路としては“飛沫感染”によるものです。

これはウイルスに感染している患者さんの咳やくしゃみなどの唾液を介して感染するものをいいます。

感染予防のためにも“咳エチケット”をしてもらうことが重要なのですが、自分自身でも予防を心がけましょう。ウイルスは口や鼻から侵入してきます。

手にウイルスがついていて、直接それを口にしてしまうことによって感染してしまうこともありますので、手洗い・うがいを習慣付けるようにしましょう。

同時に誰が患者さんなのかわからないと思いますので、自己防衛のためにもこの時期にはマスクを着用した方が良いと考えられます。

このように普段から予防をしておくと“エンテロウイルスD68”のみならず、他のウイルスからも身を守れるようになりますので意識をしてみましょう。


引用元:
子どもを襲う原因不明のまひが流行!? 可能性の1つ「エンテロウイルス」の症状・予防法は?(It Mama)