骨の主成分であるカルシウムは多くの人が知っている栄養素の一つだ。実はこのカルシウム、骨以外にも体内でさまざまな役割を果たしているという。今回は、身近な栄養素であるカルシウムの役割について紹介しよう。

カルシウムの99%は骨や歯に。残りの1%が
 カルシウムは人体の骨の中に含まれているミネラル成分だ。骨は体の骨格のもととなり、内臓を支える重要な組織の一つである。

 体内のカルシウムの99%は骨や歯にあり、体重の2%程度を占めるとされている。そして残りの1%は、「カルシウムイオン」として、血液や筋肉に溶け込み、体のさまざまな機能の調節を行っている(※1)。ちなみに「イオン」とは、カルシウムなどの原子が水に溶けて電子を帯びた状態のことをいう。

残りの1%「カルシウムイオン」の役割は?
 カルシウムイオンの役割は多岐にわたる。

 その一つが伝達の機能だ。筋肉を伸ばしたり縮めたり、脳や神経に情報をスムーズに届けるのにもカルシウムイオンがかかわっているという。

 昭和薬科大学薬学部教授の水谷顕洋氏の話によれば、目の前にあるケーキを「おいしそう」と感じ「手を伸ばす」という一連の行動にも、カルシウムイオンが必要だそうだ(※2)。

 その他にもカルシウムイオンは、免疫や止血にも関与するという(※1)。また、受精時は精子がカルシウムイオンを上げることで、卵子を活性化させているのだ(※3)。

カルシウムイオンは睡眠にも深いかかわりが
 東京大学と理化学研究所の合同研究によれば、カルシウムイオンが睡眠や覚醒の制御にかかわっていることが分かった。

 睡眠についての研究は多くされているものの、体内時計によらない睡眠や覚醒のメカニズムについては、これまで明らかになっていなかったという。

 今回行われた動物実験では、マウスのカルシウムイオン経路に依存する遺伝子を変化させたところ、睡眠時間の増減がみられたそうだ(※4)。眠れない時にリラックスする目的でホットミルクが飲まれることがある。この効果については賛否あるが、細胞レベルで眠りにカルシウムが必要であるならば、案外効果があるのかもしれない。

 ちなみに、血液中のカルシウムイオンが足りなくなると、貯蔵庫でもある骨からカルシウムが溶け出すそうだ(※1)。単に丈夫な骨のためだけでなく、体がきちんと機能するためにも、乳製品や小魚などカルシウムの多い食品を意識して摂る必要があるだろう


引用元:
体内のカルシウムの99%は骨と歯。残りの1%が睡眠に効く?(CIRCL)