女性特有のがんのうち、仕事や子育てに忙しい20代から40代女性に多く発症しているのが子宮頸(けい)がんだ。子宮頸がんは検診によって死亡率の低下が証明されているがんの一つ。子宮頸がんの早期発見法について、横浜市立大学付属病院産婦人科部長の宮城悦子さんに聞いた。
性体験のある女性なら誰でもリスクあり
子宮頸がんは、子宮の入り口である頸部(図)と呼ばれる部分に発生するがん。「子宮頸がんは年々増えており、2012年に診断された人は約1万900人で、年間約3000人がこの病気で亡くなっています。ある程度がんが広がった状態で見つかると子宮、状況によっては卵巣も手術で切除する必要があり、妊娠・出産をあきらめなければならない人もいます」。宮城さんは、そう解説する。
20代の頃に子宮頸がんになった30代の女性は、手術で子宮と卵巣を取り除いた。「そのために、恋愛や結婚にも臆病になってしまいます。手術の後遺症で足がむくみ、営業職として働けず仕事も辞めざるを得なかったのも本当につらかったです」と打ち明ける。
子宮がんには、子宮頸がんと子宮体がんの二つがある。「子宮頸がんの約90%以上は、性的接触によるヒトパピローマウイルス(HPV)への感染が原因です。一方、子宮の内側の内膜に発生する体がんの多くは、女性ホルモンのエストロゲンが発症に関わっています。まとめて子宮がんと呼ばれることも多いのですが、頸がんと体がんは、原因、性質、治療法もまったく異なる病気です」。宮城さんは、そう指摘する。
実は80%以上の女性は一生のうち1度以上、子宮頸がんの原因であるHPVに感染しているそうだ。「感染しても、免疫の力で約90%のウイルスが1〜2年以内に消えます。ところが、約10%は持続感染してがん化を抑える遺伝子を壊します。そのために異常な細胞が発生し、一般的には5〜10年かけて前がん病変から命を脅かす恐れのある子宮頸がんになるのです。
1回でも性体験がある女性なら、誰でも発症するリスクがあります。しかも、初期の子宮頸がんは一般的に、出血などの自覚症状がありません。この病気で死亡したり子宮を失ったりするリスクを減らすためにも、20歳以上の女性は、2年に1回は子宮頸がん検診を受けてください」と宮城さんは強調する。
厚生労働省の研究班が作成した「子宮頸がん検診ガイドライン」によると、定期的に検診を受けることで、子宮頸がん死亡率を最大80%減少させる効果が期待できる。一方で、検診による大きなリスクや苦痛はないが、自然に治ってしまう可能性のある軽度異形成、中等度異形成を治療する過剰診療に結びつく恐れも指摘されている。異形成とは、細胞が正常ではなくなり変化している状態のことをいう。
自治体の検診は無料から1500円程度
子宮頸がん検診は、産婦人科医が専用のヘラやブラシなどで子宮頸部の細胞を採取し、前がん病変、あるいは、がん細胞の有無を調べる細胞診だ。ほぼすべての市区町村で、20歳以上の女性が、2年に1回の子宮頸がん検診を無料から1500円程度の自己負担で受けられる。一部の企業では、女性社員向けに、自分で子宮頸部周辺の細胞を採取して検査会社へ送る自己採取検診を実施している。しかし、「自己採取細胞診による検診では、適切な場所の細胞を採取できない恐れがあり危険」と宮城さんは警告する。
一方、米国では予防医療作業部会(USPSTF)が、30〜65歳の女性に対し、細胞診と共に、ヒトパピローマウイルスへの感染の有無を調べるHPV検査の併用を推奨している。HPVに感染しているかは血液検査で簡単に調べられる。日本でも現在専門家が検討を進めているが、いまのところ日本人に対するHPV検査と細胞診併用の有効性は証明されていない。検診で軽度の異常が発見された時に精密検査でHPV検査が実施されることはあるが、現時点では、万人向けの検診としては勧められないわけだ。
なお、検診の結果は、1〜2週間後に自治体、あるいは医療機関から通知される。「異常が見つかったときには、できるだけ早く精密検査を受けましょう。さらに詳しい検査をして、少し細胞の形が変化している軽度異形成や中等度異形成と診断された場合には、病変部が自然に消えたり状態が変わらなかったりすることもあるので、一般的には定期的に通院してもらい、しばらく経過を観察します。前がん病変である高度異形成や上皮内がん(子宮頸部の粘膜の中にがんがとどまる超早期がん)は治療の対象になりますが、子宮や卵巣を摘出する必要はありません。早く見つかれば、治療が必要になったとしても体への負担が少なくて済む可能性が高まります。もっと多くの女性に子宮頸がん検診を受けてほしいですし、異常が見つかったら必ず精密検査を受けてください。男性は大事なパートナーである女性には、ぜひ検診の受診を勧めてほしいですね」と宮城さんはアドバイスする。
子宮頸がん検診の際には、内診台に乗ることに抵抗感を覚える女性も多いが、最近は、患者の羞恥心に配慮する医療機関や女性産婦人科医も増えている。自治体の検診でも医療機関が選べる場合が多いので、無料や安価で受けられる制度を上手に活用して、定期的に検診を受けるようにしたい。
引用元:
子宮頸がん検診 受けるべき理由(毎日新聞)