母乳育児のトラブルや不安を解消してもらおうと、秋田県の全25市町村が今年度、母乳外来の受診費用助成で足並みをそろえた。出産前の妊婦健康診断には国の公費負担があるが、母乳外来の受診を全県で助成するのは珍しいという。

 各市町村は産後6カ月以内の産婦を対象に、補助券1〜3枚を配布。契約医療機関での受診1回につき2160円を上限に補助する。授乳方法の指導、乳頭や乳房のケア、搾乳や排出の指導と援助に加え、母乳が足りているかどうかを確認するための赤ちゃんの体重測定も受けられる。

 秋田県産婦人科医会が2014年、県を通じて各市町村に要望。15年度に22市町村が助成をスタートさせ、今年度から秋田市など残り3市も参加した。

 要望書によると、多くの母親が母乳育児を選択しているが、分娩(ぶんべん)入院中の指導のみでは乳腺炎や乳汁分泌不良などのトラブルを完全に回避するのは難しいという。また、授乳トラブルは産後うつのきっかけになったり、児童虐待につながったりしかねないと指摘される。県産婦人科医会常任理事の小原幹隆・平鹿総合病院産婦人科診療部長は「情緒不安定な時期に助産師に心身の悩みを相談する機会を持ってもらいたい」と狙いを語る。

 県助産師会の調査では、母乳外来や開業助産師の受診費用は1回1000〜3000円で、健康保険は適用されない。補助券の配布によって「受診しやすくなった」という母親の声が聞かれるという。猿田了子会長は「必要な人が必要なケアを受けられるように事業を継続したい」と話す。

 全国的には、子育て支援の一環として母乳育児相談にかかる費用を補助する市町村もある。厚生労働省母子保健課によると、「全県での実施は聞いたことがない」という。


引用元:
秋田の全市町村、費用助成(毎日新聞)