10カ月と10日間。これは、胎児がこの世に生まれてくるまで母親のお腹の中で過ごす日数だ。ところで、「教えて!goo」に寄せられた「人間胎児の発達段階について」という投稿の中に、「胎児は、子宮の中で魚類から始まって両生類、爬虫類、哺乳類へと進化して生まれてくるのですよね」という言葉を見つけた。人間は、生物の進化の過程を胎内で追体験してから生まれてくるだって……!? どういうことだろう?
これに対し、「いわゆる反復説ですね。ヘッケル(1834-1919)の提唱したもので百年以上前の説です」(d1293さん)や「大切なのは、生物はすべて連続しているということです。ヒトの祖先をたどればサルとの共通の祖先になり…(中略)…最後には原生生物や植物との共通祖先がみつかるということです。」(ochanomizuhakaseさん)など、かなり学術的な回答が寄せられていた。うーん、正直よくわからない……。そこで、この現象について心理学者の内藤誼人先生に話を聞いた。
■10億年の進化をわずか10カ月で追体験
内藤先生によると、これは「系統発生」と呼ばれる現象だという。
「地球の誕生は、現在から約45億4000万年前のことだといわれています。そして、生命の誕生は、それから5億年程度経過した約40億年前のこと。その後、約10億年前に多細胞生物が誕生し、やがて魚類、両生類、爬虫類……と進化していったわけですが、これを人間が胎内にいる10カ月でたどってから誕生するというのが、『系統発生』の考え方です」(内藤先生)
長い歴史の末の進化を、わずか10カ月で追体験するとは驚きだ。
「少し具体的に説明しましょう。もちろん個人差がありますが、受胎から約32日目に、まずは魚のような姿になります。少し経つと両生類のような姿に。さらに、古代のネズミに似た原始哺乳類のような姿になり、やがて人間の姿になっていくのです。人間は、みんなこの過程を経て誕生するのですね」(内藤先生)
もちろん、母親の胎内にいた時に魚のような姿をしていたことを覚えている人はいないだろう。だが、自分のまわりにいた人たちが皆、この過程を経て誕生したのだと考えると、不思議な気分にならないだろうか。
■10カ月と10日間で生まれるのにも理由があった
また、人間が10カ月と10日間で誕生するのにも、理由があるのだという。
「スイスの生物学者アドルフ・ポルトマンが、『生理的早産説』を唱えました。人間以外の動物は、ある程度生活できる状態になってから生まれてくるといわれています。本来なら、人間も胎内で21カ月ぐらい過ごしてから誕生すべきだとも考えられているのです。しかし、実際は半分以下の約10カ月で生まれますよね。これは、胎児があまりに大きくなると、母親の産道を通れなくなってしまうからです」(内藤先生)
人間は、本来なら母親のお腹の中にいるべき期間の約半分で生まれてしまうのだという。その理由が産道を通るためだというのは納得できるが、他の動物は胎内で充分育った後も産道を通って誕生しているはずである。なぜ、人間だけがこのような状態になってしまったのだろうか。実は、ここにも進化が関係しているのだという。
「ポルトマンによれば、直立歩行するようになってから、生理的早産が始まったとされています。直立歩行をすることで骨盤が小さくなった結果、胎児が産道を通ることができなくなってしまったのですね。人間は、生理的早産と引き換えに、直立二足歩行を手に入れたと考えることもできるわけですね」(内藤先生)
つまり、母親としては子どもがある程度自分で生活できる状態で生まれさせてあげたいが、直立歩行という進化を遂げた結果、かなわなくなってしまったようだ。
「系統発生」も「直立歩行」も、キーワードは「進化」。今後、人間はどう進化するのだろうか。その進化を遂げたら、胎内でたどる過程や誕生の仕方にも変化が出てくるのかもしれない。とはいえ、これが表れるのはきっとずっと先のこと。この目で見られないのが残念だ。
引用元:
たった10カ月で進化を追体験!胎児に起こる奇跡とは(日刊アメーバニュース)