「2018年度を目途に一斉スタート」目指す
日本専門医機構は7月20日の理事会で、19の基本診療領域の全てについて、新専門医制度は「2018年度を目途に一斉にスタートする」方針を決定した。6月の時点では、同機構認定の新専門医制度に移行するか、学会独自で実施するかの判断は各学会に委ねられていたが、2017年度は各学会が従来通り、専門医制度を運営する(『新専門医制度、2017年度の全面実施見送りへ』を参照)。7月25日に予定されている社員総会で了承が得られれば、正式決定となる。
同機構理事長の吉村博邦氏は、「ここは一度立ち止まって、国民や地域の方々の懸念を払拭できるよう、機構と学会が連携して問題点を改善し、2018年度を目途に一斉にスタートできることを目指す。2017年度については、研修医や国民の混乱を回避するために、各学会に責任を持って制度を運営してもらう」と説明した。今回の方針決定には、新専門医制度に移行した場合、全19領域の専攻医の募集定員の合計が約1万9000人で、後期研修医の過去採用実績の約8000人の2倍以上となることから、専攻医が都市部に集中する懸念がある上、新専門医制度に移行する領域と移行しない領域の混在が、専攻医の混乱を招くという判断が働いた。
新たに基本診療領域に加わる総合診療専門医については、「既存の学会はないので、日本専門医機構の正式な運用としては差し控える。ただし、研修医の混乱を回避するために、新たな方策を考え、暫定的な試行について検討したい」(吉村理事長)。
ただし、各学会に対しては、日本専門医機構から、(1)できるだけ既存の専門研修プログラムを用いる、(2)暫定プログラムを用いる場合には、基幹施設と連携施設の関係を再検討するほか、指導医の資格を緩やかにするなど、従来、専門研修を実施していた施設が引き続き専門研修を行えるようにするなどの工夫をする、(3)地域医療を混乱させないために、例えば、専攻医の募集定員は、昨年度実績の1.2倍に抑えるなどして、都市部に専攻医が集中しないように配慮する――などの要請を行う。暫定プログラムとは、日本専門医機構は、新専門医制度の開始を念頭に、専門研修プログラムの1次審査を終えており、そのプログラムのこと。
既に2017年度の方針については学会独自での実施を決定しているケースもあるが、日本内科学会や日本外科学会をはじめとする未決定の学会は、日本専門医機構からの要請を踏まえて検討し、2017年度の専門医研修に向けた準備を早急に進めることになる。
さらに日本専門医機構は、「2018年度を目途に一斉にスタート」を目指し、今後、改めて新専門医制度の在り方を検討する。サブスペシャルティについても、内科と外科を中心に、基本診療領域との関係を整理した上で、2018年度のスタートに臨む。2017年度の募集定員を「昨年度実績の1.2倍」に抑えることも、地域医療の混乱を避けるためのあくまで目安で、2018年度以降、どんな指標を設定するかも含めて検討する。
今回の方針決定は、専門医の更新にも関係する。既に産婦人科、形成外科、病理、リハビリテーション、整形外科の4科については、新専門医制度の基準に基づく更新が始まっている。決定事項ではないが、これらの領域に限っては引き続き、新制度での更新を行う見通し。
20日の理事会決定事項のもう一つの注目点は、「将来のわが国の人口構成や疾病構造などを勘案して、あるべき専門医の姿を検討する場を設ける」ことを決定した点。「わが国にどんな専門医が必要かという、大局的な大方針を決めていく」(吉村理事長)。2018年度からの新専門医制度に関する検討と並行して進める方針。
そのほか、20日の理事会では、日本医学会連合推薦の理事枠2人のうち、未定だった1人が決定した。東京大学大学院医学系研究科教授の南学正臣氏だ。
理事会後に記者会見する日本専門医機構幹部。左から、山下英俊副理事長、吉村博邦理事長、松原謙二副理事長。
専攻医の募集定員、過去実績の3倍超の領域も
日本専門医機構は20日、午後2時から午後4時まで、「基本領域連絡協議会」を開き、各基本領域の学会と地域医療への影響などについて意見交換。その後、午後4時から午後6時まで、「専門医研修プログラムと地域医療にかかわる新たな検討委員会」を開催。これらの議論を踏まえ、午後6時から午後7時すぎまで開かれた理事会で、今後の方針を決定した。
「専門医研修プログラムと地域医療にかかわる新たな検討委員会」は、7月10日の理事会で設置が決まった「新たな検討の場」で、兵庫県知事の井戸敏三氏をはじめ、理事のうち学会関係者を除くメンバーのほか、独立行政法人地域医療推進機構(JCHO)理事長の尾身茂氏が加わった、計20人で構成。うち17人が出席した。
これらの議論で、「各領域とも地域医療への配慮がかなりなされているが、領域によっては問題が含まれている」(吉村氏)ことなどが明らかになった。専攻医の採用実績があっても、指導医の要件が厳しくなり、基幹あるいは連携の研修施設になれない領域などがあったほか、各専門研修プログラムの専攻医の募集定員総数が、過去の採用実績の約2倍、場合によっては3倍を超す領域もあった。総合診療専門医については、医学部の「地域枠」の卒業生、卒後に義務年限がある自治医科大学の出身者、病院総合診療医などの扱いなどの検討課題が上がったという。
「募集定員1.2倍」は暫定目安
「専攻医の募集定員は、昨年度実績の1.2倍」について、日本専門医機構副理事長の松原謙二氏は、「あくまでも都市部に専攻医が集中しないように配慮するための暫定的な数値。今後ずっと適用されるものではない」と強調した。
同じく副理事長の山下英俊氏も、「地域医療に配慮するためには、(募集定員の上限を設定するという)オプションがあると、ということ」と述べ、「1.2倍」は暫定的なものであることを強調。さらに2017年度にどんな専門研修プログラムで実施するかは、各学会で異なってくるとし、「暫定プログラム」という言葉を使ったのは、「問題点が出てくれば、次につなげる」という意味であり、2018年度の一斉開始に向けて、同機構と各学会が協同して検討していく方針を確認した。
20日の理事会で、2017年度の専門医制度は、「学会独自」運営であり、総合診療専門医以外の基本方針は決まった。もっとも、新制度開始を1年延期したものの、専門医の質の向上と、地域医療への影響を最小限にし、これから専門医を目指す若手医師を含め、関係者の理解を得ることは、「複雑な方程式」を解くようなものであり、それ故に混乱が生じて今に至っている。1年延期でも、検討期間は1年もなく、どこまで軌道修正を図ることができるか、その見通しは現時点では立っていない。さらに「あるべき専門医の姿」を改めて検討するとしており、2018年度開始予定の新専門医制度の位置付けも再整理する必要が出てくるだろう。
引用元:
新専門医制度、全19領域とも「1年延期」へ(m3.com)