お産の役割を地域で分担する「産科セミオープンシステム」に取り組む仙台市内の医療機関が10月、妊婦健診の結果を電子データで共有するシステムを始動させる。東日本大震災時、診療所の被災や避難のため多くの妊婦が予定外の施設で出産せざるを得なかったことを教訓とした。今後、県内全域で普及させる方針だ。
市内9診療所と東北大病院、東北公済病院、仙台赤十字病院などの基幹病院が参加。産科セミオープンシステムの電子データ共有化は全国初の試みとなる。
宮城県内の産婦人科医らで構成するNPO法人「宮城産婦人科医療情報ネットワーク協議会」が、国の地域医療再生臨時特例基金を活用してシステム整備を進めている。
システムは、協議会が運用。妊婦の同意を得た上で情報を電子データ化し、どこの参加医療機関でもデータを引き出せるようにする。これまでは、妊婦が「共通診療ノート」を持参し、健診担当の診療所と分娩(ぶんべん)施設がノートで情報を共有していた。
協議会理事で、東北大東北メディカル・メガバンク機構の菅原準一教授(周産期医学)によると、県内の全産科医療機関を調査した結果、震災直後の2カ月間で、全体の約1割に当たる217人の妊婦が予定外の病院などで出産した。県内全消防本部のデータでは、震災後1年間に妊婦が救急搬送された件数は、前年の1.4倍近い807件に増えたことも確認された。
菅原教授は「予定外の医療機関に運ばれ、情報が少ないままのお産はリスクも高くなる」と指摘。災害時に母子手帳や診療ノートを持参できるとは限らず、「母子の命を守るためにも医療機関同士の情報共有が必要だ」と強調する。
将来は妊婦本人がスマートフォンで情報を確認し、妊娠週数などに応じたアドバイスを受け取ることができる仕組みも構築。自治体とも情報共有し、産後のケアなどに役立てる考えだ。
菅原教授は「切れ目のない支援につなげられるよう、システムを発展させたい」と話している。
[産科セミオープンシステム]お産を巡り、地域の医療機関の役割を分担する仕組み。通常の妊婦健診は診療所、出産は医療体制の整った病院で行う。病院の負担軽減を図ると同時に、妊婦は自宅近くの診療所を利用できるなどのメリットがある。仙台市では2005年に始まり、宮城県内では大崎、石巻、気仙沼地域などで導入されている。
引用元:
妊婦健診データ共有へ 震災教訓に体制強化(河北新報)