おなかの赤ちゃんにダウン症などになる染色体異常がないか、妊婦の血液で調べる新出生前診断を受診した人が3万人を超えた。
晩婚化に伴い、高齢での妊娠に不安を抱く人が多いことを示している。
ただ、3年前に始まったこの診断は臨床研究の段階だ。生命倫理や障害との向き合い方など幅広い問題が絡む検査を、このまま一般診療に広げていくことには懸念がある。実態を十分検証して公表し、国民的な議論を起こすことが欠かせない。
新出生前診断は、妊娠10週以降の早い時期に、妊婦の血液に含まれるDNA断片を解析し、ダウン症のほか心臓疾患などを伴う13、18トリソミーという染色体異常を判定する。受診できる妊婦は、出産時35歳以上などの条件がある。
血液検査で陽性の場合、確定診断にはおなかに針を刺す羊水検査が必要になる。陰性の場合は羊水検査を回避できるため、従来の診断のような流産のリスクを減らせる。国内の機関で検査できるようになり、費用も10万円台に下がった。希望者が増えた一因だろう。
実施する医療機関でつくる研究チームのまとめでは、3万人余の1・8%の547人が血液検査で陽性になり、確定診断で417人が異常ありとされた。その94%に当たる394人が人工妊娠中絶を選択した。
せっかく授かった命だ。産むにしろ産まないにしろ重い決断だったことは察するに余りある。
問題は、夫婦の判断に当たってどこまで情報を得られ、丁寧な説明を受けられたかだ。
遺伝に関わる疾患の検査などで正確な知識を伝え、悩んでいる人をサポートする「遺伝カウンセラー」という専門資格がある。医師が診療からカウンセリングまで手掛けてきた不備を補い、相談を充実させる狙いで日本遺伝カウンセリング学会などが2005年に認定制度を始めた。
その数は昨年12月時点で182人。一方で、一定の条件を満たし、新出生前診断を実施する医療機関は3年前の15施設から5倍近い71施設に増えた。十分なカウンセリングができているのか。厚生労働省は調査、公表すべきだ。
胎児の異常が分かれば、大多数が中絶するという現実をどう考えたらいいだろう。
障害があっても育てられる支援態勢が整っているか。周囲の偏見はどうか。いずれも夫婦の判断に関わっている。社会のありようも問われている。
(7月21日)
引用元:
新出生前診断 問われる社会のあり方(信濃毎日新聞 )