多くの親にとって、子供が自分より早く死んでしまうことほど辛いことはない。その子供がまだ年若く、孫もいなければ尚更だ。だが、もし、その子供の卵子が凍結保存されていて、孫をつくることができたとしたら? イギリスでは60歳の女性とその夫が、28歳で亡くなった一人娘の卵子で孫をつくるために裁判を起こしている。6月30日付けのBBC Newsが報じた。


■娘の卵子を使って...

 記事によると、この女性と夫(M夫妻)は、2011年に死去した娘の凍結卵子をドナーの精子と受精して、孫を出産したいと希望している。夫妻の娘・Aさんは23歳の時に大腸ガンと診断され、卵子を凍結保存していた。生前、Aさんはこの卵子で子供をつくって欲しいと母親に語っていたという。夫妻は娘の凍結卵子とドナーの精子を受精させて出産させてくれる病院を探したが、イギリス国内では見つからず、アメリカ・ニューヨークの病院で治療を受けることとなった。

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 イギリスでは生殖補助医療や胚研究を『ヒトの受精および胚研究認可局(HFEA)』という独立機関が監督・認可している。M夫妻もHFEAに申請を出したが、Aさんの同意書が不完全だったことから申請を却下した。M夫妻はニューヨークの病院に卵子を送る権利を求め、HFEAに対して訴訟を起こした。今年6月の判決で夫妻は敗訴したが、控訴審が開かれることになった。
 しかし、60歳の女性が孫を代理出産するなど可能なのだろうか。医学にも詳しい理学博士X氏に尋ねた。

「女性ホルモンであるエストロゲンを投与することで、閉経後の高齢女性でも出産することはできます。つい最近もインドで70歳の女性が体外受精で妊娠、出産したと話題になりました。日本でも子宮を失った娘のために実母が代理出産したケースがあります。ただ、薬を使って無理矢理妊娠するのですから、体にかかる負担は重いですし、受精卵が着床して無事出産まで至る確率も当然かなり低いと聞きます」

■生殖補助医療の倫理的問題

 X氏は医学的な問題より、倫理的、社会的な問題の方が多いのではないかと語った。

「生殖補助医療の議論はうやむやのまま、現実の方がどんどん先に進んでいます。代理出産の是非でさえ未だに賛否両論です。死者の精子や卵子を使って子供をつくることも同様で、死んだ夫の精子を使って子供を作ったというケースは今までにも何回かあったのですが、やはり世界的に議論を呼びました」

 今回のように、死んだ娘の卵子で母親が代理出産するというケースは世界でも前例がないという。M夫妻は今回の訴訟を匿名で行っているが、これは未来の孫のプライバシーとアイデンティティを守るためだ。果たしてM夫妻は孫を得ることができるのだろうか。裁判の行方を見守りたい。



引用元:
祖母が孫を産む時代が到来 ― “死んだ娘の卵子”で60歳母が誕生(BIGLOBEニュース)