◆親の「人任せ」課題も

 地域の子供たちに無料または低額で食事を提供する「子供食堂」が、足立区でも広がり始めている。区内の小学1年生を対象にした調査では約25%が「生活困難世帯」とされており、区も、子供食堂が一人親や貧困家庭などへの手助けになるとして注目している。

 「おいしそう!! いただきます」。同区六月の「割烹かっぽう 平野屋」では、今年4月から月に1回、とんかつ定食を1食300円で提供する「平野屋こども食堂」が行われている。中にはご飯を4杯もおかわりしていく子供も。毎回訪れているという小学5年の男児(10)は、「とんかつが大好きだし、友達と食べられて楽しい」と笑顔だ。

 食堂は地域の主婦らでつくる「足立活き活き会」が運営。店の定休日を利用し、30食限定で開催している。ご飯とみそ汁、自慢のとんかつに加え、同会メンバーによる手料理2品も提供しており、鈴木圭子会長(70)は「一人ぼっちで夕飯を食べている子はもちろん、忙しい母親も子供を連れて来てほしい」と話す。

 区が小学1年生の世帯を対象に昨年実施した調査では、年収300万円未満などの「生活困難世帯」では、5・4%が一人または子供たちだけで夕飯を食べている。区子どもの貧困対策担当課も「気軽に寄れる食堂があれば、一人で食事をすることも少なくなる」と広がりに期待を寄せる。

 食堂の輪は全国でも広がっており、「こども食堂ネットワーク」によると、現在、全国約90か所の子供食堂が同ネットワークに参加して食事を提供。このほかにも、数百か所で開催されているとみられる。

 貧困家庭の受け皿として期待される子供食堂だが、長期にわたって運営する仕組み作りなども必要だ。

 同区六町の「六町駅前商店会」では、中華料理店やそば店が、中学生以下の子供にメニューの一部を100円で提供する「六町100円食堂」を昨年から5回、不定期で開催してきた。代金の大部分は商店会費で負担し、保護者は通常料金を払うため、商店会相談役の新里原良さん(58)は、「店側にとってもきちんとメリットはある」と説明する。

 新里さんは、「むしろ、子供だけでの利用が続くと、親が『食堂任せ』の状態に慣れてしまう」と課題も指摘。「子供食堂の運営には、親を巻き込む工夫が必要。商店会としてその在り方を今後も模索していきたい」と話している。


引用元:
子供食堂、広がる笑顔 足立でも 東京 (読売新聞)