蚊が飛び交う季節が、今年もやってきた。気になるのは、かゆみだけでなく、蚊がウイルスを運ぶ感染症だ。一昨年、約70年ぶりに国内感染が確認されたデング熱だけでなく、中南米を中心に流行中のジカウイルス感染症(ジカ熱)もあり、国や自治体は注意を呼びかける。本格的な夏を前に、蚊よけビジネスも熱を帯びる。

ジカウイルスについての解説《上》 どんなウイルスなのか
ジカウイルスについての解説《中》 本当に小頭症を起こすのか
ジカウイルスについての解説《下》 どう防ぐか、日本での対応は
 「いつどんな形でウイルスが広がるか分からない」

 横浜市の会社員野沢知子さん(32)は妊娠7カ月。公園などに外出する際は長袖を着て虫よけスプレーを欠かさない。7階の自宅マンションでも、虫よけキャンドルをたき、蚊に刺されないように気を配る。妊娠中の友人とも、蚊の対策が話題にのぼることが多い。

 心配の種はジカウイルス。日本にも広く分布するヒトスジシマカを媒介して感染が広がる。ウイルスを持つ人の血を吸った蚊が別の人を刺し、「人から蚊」「蚊から人」という感染を繰り返して広がる。ヒトスジシマカは5月中旬〜10月下旬に活動する。

 妊婦が感染すると、小頭症の赤ちゃんが生まれる恐れが指摘されている。ブラジルなどで流行し世界保健機関(WHO)が2月、緊急事態を宣言し、タイ、フィリピン、ベトナムでも流行。国内でも今年、海外で感染した7人の発症が報告された。

 人口の約1割をブラジル人が占める群馬県大泉町は、現地に訪れる人も多いとみられるため、ポルトガル語で注意を呼びかけるポスターを町内のブラジル料理店などに配った。リオデジャネイロ五輪・パラリンピックを控え、厚生労働省は現地で蚊に刺されないよう注意喚起し、妊婦は流行地への渡航を控えるよう呼びかけている。

 2年前には、同じヒトスジシマカによって感染が広がるデング熱が国内で流行し、首都圏を中心に約160人が感染した。今年は今のところ報告例はない。ただし、海外で感染する患者は増えており、今年6月12日時点で145人。過去最多だった昨年の同時期の101人を大幅に上回る。

 一昨年、代々木公園が閉鎖に追い込まれた東京都は、今年も4月から公園などで蚊を定期的に採取し、ウイルスを持っているか調べているが、今のところ報告はない。「蚊の用心」と書かれたラッピングバスも昨年に引き続き走らせる。



引用元:
蚊の季節到来 ジカ熱、デング熱にも要注意(朝日新聞‎ )