歌舞伎俳優・市川海老蔵さんの妻でフリーアナウンサーの小林麻央さんが進行性の乳がんで闘病中だ。33歳という若さもあり、同年代の女性たちに衝撃を与えている。麻央さんのように毎年検診を受けているのに発症したという話もよく聞く話だ。乳がんについて専門医に話を聞いた。
■乳がんの5〜10%が遺伝性
「一般的に乳がんのうち5〜10%が遺伝性といわれています」と、東京慈恵会医科大学乳腺内分泌外科の鳥海弥寿雄准教授が話す。
これは腫瘍抑制遺伝子であるBRCA1、BRCA2遺伝子の病的変異によるもので、卵巣がんの発症とも深い関係があるという。
鳥海准教授は「他に明確な遺伝子の関与が明らかでないものの、癌の発症の多い家系が存在することも確かです」とがん家系にも言及。「環境因子などが発症に関与している可能性もあります」との見解も示した。
近親者に多く乳がんが発症している人は、遺伝的に乳がんになりやすい可能性があるわけで該当する人は定期的な検診を欠かさない方がよいだろう。
では、乳がん検診はどれくらいの頻度で受ければよいのか。
「乳がんの進行は他のがんに比べて早いわけではありませんが、さまざまなタイプがあり、中には極めて進行が早いものもある。早いものでは爆発的に病変が広がるものもあります」(鳥海准教授)
■検診は発症抑制の手段ではない
地方自治体の検診は2年に1回が多いそうだが、鳥海准教授は「できることなら1年に1回の検診が望ましい」と勧める。
一方で「では1年に1回で大丈夫か?と言われると、どんなにマメに検診を受けても、検診の方法、精度、発症する乳癌の性質によっては間に合わない可能性もあります」とも。検診は決して発症を抑制する手段ではないことを認識しよう。
がんは乳がんだけではない。「全身にはさまざまながんが発生する可能性があり、すべてを網羅する事は不可能です。乳がんだけを心配するのもバランスが悪いように思います」と他にも目を配るよう警鐘を鳴らす。
■マンモグラィーと超音波、どちらが有効か
乳がん検診はマンモグラフィーと超音波によるものが知られるがどちらが有効なのか?
「マンモグラフィーはX線を用い、乳房を圧迫して撮影を行う検査方法で、乳癌に特徴的な微細な石灰化を検出するのに優れています」と鳥海准教授。しかし、石灰化を伴わない乳癌も多く、万能ではないという。
続けて鳥海准教授は「乳がん検診に多く用いられるのは、撮影した画像を後から評価しても客観性のある判断ができるからです。もっとも乳腺の密度の濃い若年者は病変の検出率が劣ります」と話す。
では、若年者は超音波による検診の方がよいのか。「乳房に超音波を照射して内部の構造を調べる検査方法で、腫瘤の検出に優れています」という。
一方で「乳がんの中には、はっきりとした腫瘤(かたまり)を作らないものもあり、これらのがんについては検出率が劣ります」とも。さらに検診としての精度管理が確立されておらず、所見が客観的に評価しにくい傾向にあるという。
鳥海准教授は「つまりどちらの検査も癌をすべて検出できるわけではないのです。両者を併用すると、病変の検出能はかなり高くなりますが、100%には届きません」と現状を解説し、隔年で交代して検診することを提案する。検診は原則自費となる。
入浴の際に石鹸をつけて乳房を触る自己検診もある。
「定期的に行うことで異常を発見しやすくなります。『継続は力なり』です。自己触診は、生理が終わったあと5日目あたり、すなわち次の排卵前が、乳腺がもっともやわらかくて適しています。生理がない人は、毎月の1日とか、日を決めて自己触診を行う事をお勧めします」(鳥海准教授)とのことだ。
最後に「家族に乳癌の発症の多い人は、20歳代から自己検診を行い、25歳以降で超音波検診を受けて行くことをお勧めします」とアドバイスした。
「教えて!goo」では現在「あなたが健康維持のために日々気をつけていることを教えてください」ということで皆さんの意見を募集している。
●専門家プロフィール:鳥海弥寿雄
東京慈恵会医科大学乳腺内分泌外科准教授。慈恵医大の乳腺診療に携わるスタッフはチームワークが魅力。多忙な毎日だが個人的には「旅が好き、人が好き、食が好き」。そして毎日の仕事も好きという。
(武藤章宏)
引用元:
なぜ麻央さんは乳がんに?遺伝の可能性、検診の有効性を専門医に聞いた(ZAKZAK)