妊婦が自宅で電極の付いた腹帯を巻き、胎児の心電図データをスマートフォンで主治医へ送るシステムの開発を、大阪電気通信大や奈良県立医科大などで作る研究チームが進めている。腹帯に西陣織の技術を応用することで簡単に着脱できるようにする計画。医師が胎児の状況をリアルタイムで把握できるようになり、産科医が不足している過疎地域でも、安全・安心な周産期医療を目指す。

 腹帯に付ける電極は、京都大と大手繊維メーカーが開発した導電性繊維(電気を通す繊維)を用いる。この繊維を西陣織の技術を応用して腹帯に縫い付けることで、繊維に凹凸ができる。これにより皮膚との接地面積が大きくなって電極の役目を果たし、妊婦が腹部に巻くだけで胎児の心電図を含んだ信号を取れるという。

 この信号から妊婦の心電図データを除去する信号処理を実施。腹帯には中継器を取り付け、心電図データを無線でスマートフォンへ送る。スマホには専用アプリをインストールし、主治医がいる医療機関へ転送する仕組みだ。妊婦は自宅にいながら、主治医による胎児のモニタリングを受けられるようになる。

研究チーム代表の吉田正樹・大阪電通大教授は「医療過疎地で暮らす妊婦について、主治医が胎児の異常に気づいた時点で救急車を手配することができる」と狙いを説明する。

 研究は奈良県立医大の発案で開始した。平成18年8月に同県大淀町で意識不明になった妊婦が相次いで転院を断られ、約6時間後に搬送された病院で出産したものの死亡した問題を受け、過疎地の周産期医療体制を改善するのが目的だった。

 奈良県では、県立医大病院がある橿原市が、産科医が常駐する最南端。このため特に県南部では、遠隔地の産科医が、母子の異常の予兆をいかに早く把握できるかが課題となっている。

 研究チームは今後、安全な通信が確保できるシステムを構築したうえで、実用化に向けた実証実験を31年度までに実施する計画。早期のサンプル出荷を目指している。


引用元:
産科に行かなくても胎児の状況把握…心電図データをスマホに送る腹帯開発進む(産経ニュース)