卵子を育て、排卵するという重要な役割を担う卵巣。その卵巣にできる悪性の腫瘍(しゅよう)が、「卵巣がん」です。

女性特有のがんの中でも、卵巣がんの発症率は、乳がんや子宮がんほど高くはありません。しかし、初期には症状が出にくく、かなり進行した頃に発見されることが多いという特徴があり、女性にとっては怖い病気の一つと言えます。

卵巣にできる腫瘍は発見しにくい
では、なぜ卵巣がんは発見されにくいのでしょうか? その答えは、卵巣の大きさや位置と関係しています。

卵巣は、子宮の両側に1つずつある、2〜3cmほどの楕円形の小さな器官。卵巣には、卵子のもとである原始卵胞が数百万個も蓄えられていて、そのうち1カ月にほぼ1個が成熟して卵子となり、排出されます(排卵)。

卵巣は、良性・悪性に関わらず、腫瘍ができやすい器官。しかし卵巣は小さく、周囲にもスペースがあるため、少し腫れた程度ではほかの臓器を圧迫しません。腫瘍が握りこぶしくらいの大きさになっても全く自覚症状のない方もいます。このことから、卵巣は「沈黙の臓器」とも呼ばれています。

主な症状は、膨満(ぼうまん)感、腰痛、頻尿
卵巣にできる腫瘍には、良性、悪性、その中間の性質を持ったもの(境界性悪性腫瘍)があり、全体のうち8割以上が良性だと言われています。良性の卵巣腫瘍でもっとも多いのが「卵巣のう腫」、悪性の卵巣腫瘍が「卵巣がん」です。

卵巣がんの発症年齢は、40代以降の閉経前後ですが、20代や30代の若い女性が発症することもあります。症状は、腫瘍が小さい初期のうちは全くと言っていいほど現れません。しかし腫瘍が大きくなると、周囲の臓器を圧迫するようになり、お腹が張って圧迫されているような違和感(膨満感)、腰痛のほか、便秘や頻尿などの症状が起こることがあります。

また、ねじれたり、破裂したりすると、急に激しい腹痛が起こります。下腹部にしこりを感じることや、生理以外のときに出血が起こることもあります。これらの症状がある場合は、早めに婦人科を受診しましょう。

将来の妊娠の可能性を失わないために
診察で腫瘍が見つかった場合、良性か悪性かを調べるために、超音波検査、CT検査、MRI検査などを行います。結果として卵巣がんであれば、通常は、がんになった組織を可能な限り切除する手術が行われます。

進行の度合いによっては、卵巣だけでなく、子宮や卵管、リンパ節などまで切除することもあります。片方の卵巣を切除しても、もう片方と子宮が残っていれば妊娠は可能ですが、両方の卵巣や子宮まで切除すると、将来の妊娠の可能性がなくなってしまいます。がんの進行度合いや再発の可能性を考慮し、医師と相談しながら慎重に治療方法を決める必要があります。

気づかないうちに、じわじわと進行する卵巣がん。初期の卵巣がんは、膣からの超音波検査、CT検査、MRI検査など、体内の状態を画像で見る検査をしないと発見できません。ただしCT検査やMRI検査は費用も高く、検診のたびに受けるのは現実的ではないでしょう。少しでも早く発見するためには、年に一度の子宮がん検診を習慣にし、その際に内診と超音波検査を受けて、卵巣の状態も見てもらうことをおすすめします。



引用元:
卵巣が"沈黙の臓器"と呼ばれる理由 - 卵巣がんの怖さを知ろう(マイナビニュース)