難病のミトコンドリア病の素因を持つ母親が子どもを産む際、子どもが発症するのを防ぐため、核を除いた健康な女性の卵子に母親の核を移植して体外受精しても発症を防げない可能性があることを示す研究結果を、米国のチームが米科学誌セルステムセルで発表した。わずかに持ち込まれた異常なミトコンドリアが増えてしまう場合があるためで、現在の核移植技術では母親の異常なミトコンドリアを完全に排除することは難しく、安全性を巡り議論を呼びそうだ。

 ミトコンドリア病は、細胞小器官のミトコンドリアの異常によって起こる病気。血液が全身に送れなくなったり、運動や物事の理解に支障が出たりする。海外の報告では、患者数は10万人当たり9〜15人とされている。

 チームによると、健康な女性が提供した卵子から核を除き、別の女性の核を入れる「卵子核移植」をした後、特殊な技術を使って胚性幹細胞(ES細胞)を作製し、長期間培養した。その結果、12株のうち11株では核と一緒に持ち込まれたミトコンドリアが増えなかったが、1株でその量が当初の1.3%から約10カ月後には53%にまで増加。ES細胞から皮膚や心筋の細胞に変化させた後でも、同様に元のミトコンドリアが大幅に増えるケースがあった。

 ミトコンドリア病を防ぐ目的で行う卵子核移植を巡っては、日本では実施が確認されていないが、英国では昨年、実施に向けて合法化された。

 米ニューヨーク幹細胞財団研究所にいたチームの山田満稔(みつとし)・慶応大助教(生殖医学)は「卵子核移植をしてもミトコンドリア病を防げない可能性がある。ただし、技術の改良や卵子提供者の選び方を工夫すれば、異常なミトコンドリアの増加を防げるかもしれない」と指摘した。

 石井哲也・北海道大教授(生命倫理)の話 卵子核移植のリスクを示す重要な報告で、臨床応用は時期尚早ではないか。技術的な安全性などについて検討する必要がある。【須田桃子】



引用元:
難病ミトコンドリア病 卵子核移植、子どもの発症妨げず?(毎日新聞)