震度7の地震に2度も襲われた熊本県益城町では、地元医師会に所属する17の医療施設全てが何らかの被害を受けた。外壁の崩落やひび割れといった被害は県内約450の医療施設に広がっている。

 南阿蘇村では唯一の救急指定病院である阿蘇立野病院が被災して診療中止が続く。地域医療への影響は長引くことが懸念される。

 益城町や熊本市などで避難生活を送る被災者は9千人近くに上る。感染症や熱中症、エコノミークラス症候群などを警戒しながら健康管理に気を配る必要がある。

 現地の医療関係者は懸命の努力で災害医療の最前線に立ち続けている。改めて敬意を表したい。

 それでも、各地に点在する避難所から車やテントで寝起きしている人たちのケアや疾患予防まで全てを担うことは不可能だ。

 災害直後の緊急支援である災害派遣医療チーム(DMAT)を引き継いで、全国の日本医師会災害医療チーム(JMAT)が続々と現地入りしている。

 仮設住宅への入居が始まった後も、孤独死を防ぐための心のケアや見守りを
含む巡回診療が欠かせない。日本医師会には当面のJMATの派遣継続とともに、長期的視野に立って被災地の医療を支える取り組みを期待したい。

 熊本市民病院で一部診療が再開されたが、高度医療が必要な母子を受け入れる総合周産期母子医療センターが機能不全に陥っている。年間600人超の母子を受け入れる九州有数の施設だ。各県の関係施設で協力態勢を整え、九州の周産期医療を守る必要がある。

 医療施設に対する災害復旧費の国庫補助は公的医療施設などに限られる。だが、「かかりつけ医」の小さな医院や診療所も大切な地域の医療インフラだ。熊本県は国に全施設への補助適用と補助率かさ上げを要望している。国はぜひ前向きに検討してほしい。

 被災者が生活再建に向けて一歩を踏み出すには、言うまでもなく心身の健康が前提となる。その支えとなる地域医療の再建と充実に全力を挙げて取り組みたい。


引用元:
被災地医療 長期的視野で再建支援を(西日本新聞)