熊本地震発生から3週間。繰り返される余震や長引く避難生活に幼い子を持つ母親の精神状態が不安定になっている。大村市水田町の助産師、荒木小百合さん(36)は「熊本に恩返しをしたい」と被災地で母子の健康相談や心のケアに奔走している。

 荒木さんは2007年、「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)で知られる熊本市の慈恵病院で助産師のキャリアをスタート。11年まで勤務し「熊本に育ててもらった」との思いが強い。

 地震発生後、同市の由来(ゆらい)助産院がボランティアを募っていることをフェイスブックで知り、友人らと集めた離乳食、紙おむつ、生理用品などをトラックに積み込み、現地に向かった。

 荒木さんによると、熊本県助産師会は約20人で手分けして各地の避難所などを担当。妊産婦のケアに当たっていたが、人手が不足していた。荒木さんが由来助産院のスタッフになることで、土地勘のある助産師が避難所などを回れるようになった。

 助産院で健康相談中、余震で体がずんと持ち上げられるような感覚に襲われた。赤ちゃんを抱えた母親たちの表情がこわばる。避難所に授乳室がないため車中泊を余儀なくされたり、水分を十分に取れなかったりして、母乳が出なくなったとの相談も増えている。

 心配する荒木さんに「大丈夫です」と答える母親たち。しかし、不安な胸の内を明かせないのが実情という。ゴールデンウイーク(GW)に入り、母乳の分泌を促すマッサージを施しながら母親が交流する場をつくろうと、市内の公園で青空ヨガを開催。母親たちの話に荒木さんが耳を傾けていると、先の見えない不安に泣きだす人もいた。

 GW以降、心のケアの専門家が数多く被災地に入り、次第に避難所も縮小している。しかし、心身の異常を訴える妊産婦は今も少なくない。「現地の医療者も疲弊している」と荒木さん。今後も月2回は現地に入り、「熊本への恩返し」を続けるつもりだ。

引用元:
被災地の母子のケアに奔走(長崎新聞)