がんは日本人の死因の第1位です。現在では、年間30万人以上の日本人ががんで亡くなっています。これは、3人に1人が“がん”で亡くなっていることになります。日本人が生涯のうちにがんにかかる確率は、2人に1人と言われており、近年では10〜40代の若者のがん患者が増加傾向にあります。
がんの治療法は日々進歩しています。体へのダメージが強かった治療法が体に優しい治療法になっています。若年患者に対するがん治療は、その内容によって卵巣や精巣が強く障害され、妊娠ができなくなったり、若いうちから閉経になったりしました。しかし、最近では冷凍保存の進歩と体外受精(2月29日付本欄参照)の技術向上のおかげで、若年のがん患者の妊娠の可能性を残すため、さまざまな対策がとられています。今回はがん治療中の「妊よう性温存」について考えてみましょう。
がん治療の基本は「手術」「抗がん剤」「放射線」の3種類があり、これを三大療法と呼んでいます。日本では、これまで手術ががん治療の中心にありましたが、近年は抗がん剤や放射線治療が進歩し、がんの種類や進行度によっては、手術と変わらない効果が認められています。
抗がん剤や放射線治療がなぜ、卵巣に障害をもたらすのでしょうか? がん細胞は正常な細胞よりもずっと早く分裂して増殖します。分裂中の細胞は抗がん剤や放射線の攻撃に弱く、破壊されてしまいます。正常な細胞でも、細胞分裂が活発な組織ほど、抗がん剤や放射線の影響を受けます。卵巣も直接のダメージを受けやすく、抗がん剤によって卵子やホルモンを作り出す細胞数も減少していきます。年齢や抗がん剤の種類にもよりますが、20〜100%の患者が無月経や無排卵となります。
したがって、がん治療後に子どもが欲しい人は、できるだけ1回目の抗がん剤や放射線治療が始まる前に、卵子か卵巣を採取して凍結保存しておくのがお勧めです。氷点下196度という超低温の液体窒素に浸して凍結し、保存する方法です。氷点下196度では生物反応や化学変化が起こらないため、何十年も保存することが出来ます。今のところは凍結して解凍した卵子の妊娠率が低く、卵巣の凍結保存が現実的です。ただし、男性の精子とは異なり、女性がん患者は卵子あるいは卵巣組織を、外科的に採取しなければならないのが難点です。また、パートナーがいれば、精子と卵子を体外受精して受精卵(胚)の状態で凍結保存します。受精卵の凍結保存は広く受け入れられた方法で、凍結すると半永久的に保存が可能となります。
若年がん患者はがんに対する治療を最優先すべきですが、がんに対する診断法や治療法の進歩に伴って、将来妊娠することが可能になっています。がん治療開始前から、将来的な妊娠に関する十分な対策を練る必要性があります。生殖医療の知識を併せ持ったがん治療専門医の知識を借りましょう。
引用元:
受精卵や卵巣を凍結 がん治療中の妊よう性温存(岐阜新聞)