妊娠中に高血圧が発生するのは非常に危険な状態で、母親や胎児の死亡につながる可能性もあります。母親の心筋症も妊娠高血圧による危険性のひとつです。デンマークの研究チームが、出産後5ヶ月を過ぎての心筋症への影響を報告しました。


妊娠高血圧によって起こる影響のひとつとして、周産期心筋症が知られています。周産期は妊娠中から産後の母体が元の状態に戻るまでの間を言います。

周産期心筋症では、心臓病のなかった女性が妊娠・出産をきっかけに心機能が低下し、心臓のポンプの働きが弱くなり、息切れ、咳、全身倦怠感、むくみ等の症状が出てきます。



◆出産後5ヶ月から34年7ヶ月までの心筋症の発生を検証

研究チームは、妊娠高血圧がある人・ない人を合わせた1,075,763人のデータの解析を行いました。周産期以後(出産後5ヶ月から34年7ヶ月)の心筋症の発生が、妊娠高血圧症の有無によって違うのかを検証しました。



◆リスク増は妊娠以後5年以上持続

解析から次の結果が得られました。
正常血圧で妊娠していた女性と比較して(フォローアップ18,211,603人・年;心筋症イベント n = 1,408, 10万人・年あたり7.7[95%信頼区間, 7.3-8.2])、妊娠中の高血圧性疾患の病歴のある女性は心筋症発症率が有意に高かった(重症妊娠高血圧腎症を有する女性でのフォローアップ173,062人・年、心筋症イベントn = 27; 10万人・年あたり15.6[95%信頼区間, 10.7-22.7] ; 調整ハザード比2.20[95%信頼区間, 1.50 - 3.23];中等度妊娠高血圧腎症を有する女性でのフォローアップ697,447人・年、心筋症イベントn = 102;10万人・年あたり14.6[95%信頼区間, 12.0-17.8] ; 調整ハザード比1.89 [95%信頼区間, 1.55-2.23] ;妊娠高血圧を有する女性でのフォローアップ213,197人・年、心筋症イベントn =40 ;10万人・年あたり17.3[95%信頼区間, 12.7-23.6]  ;調整ハザード比2.06[95%信頼区間, 1.50-2.82])。これらの増加は、直近の妊娠後5年以上持続していた。
妊娠高血圧症だったことのある女性は妊娠中に正常血圧だった女性に比べ、心筋症がおこる率が高く、最終妊娠以後5年以上発症リスクは持続していました。



産後は、乳児の子育てで身体への負担が多いですし、自分のことを後回しにしがちですが、症状が悪化すると治療に時間がかかります。妊娠高血圧症だった女性は、治療を続けている場合はしっかり定期受診に行き、そうでない場合も気になることがあれば、早めにかかりつけ医に相談され、ご家族の方も気遣いやサポートをされることが大切です。


◆参照文献

Association Between Hypertensive Disorders of Pregnancy and Later Risk of Cardiomyopathy.

JAMA. 2016 Mar 8.

引用元:
妊娠高血圧の影響は周産期後も続く(MEDLEY)