成人女性の3、4人に1人がなるといわれるほど、子宮系の病気の中でも発症率が高いのが子宮筋腫。子宮内の筋腫が大きくなるまで症状が現れないことも多く、子宮筋腫と診断されて驚く人も多いようです。落ち着いて対処できるよう、正しい知識を得ておきましょう。順天堂大学医学部附属順天堂医院産科・婦人科准教授、北出真理先生にお話をうかがいました。

30〜40代の女性がなりやすい子宮内の“良性腫瘍”

−−子宮筋腫はどのような病気ですか?

 北出 子宮に良性の腫瘍ができる状態を指します。子宮の壁をつくっている平滑筋という筋肉の中に筋腫の組織が集まり、コブのようなかたまりになるのです。良性の腫瘍なので、がんのように転移してほかの組織を壊すことなどはほとんどありません。

−−何か原因はあるのですか?

 北出 原因ははっきりしないといわれていますが、症状の悪化には女性ホルモンが関係していると考えられています。女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌の刺激で大きくなり、逆にエストロゲンの分泌が減る閉経後には、ほとんどの場合、筋腫はゆっくり縮小していきます。

−−どのような人がなりやすいですか?

北出 30〜40代の人がほとんどで、一番多いのは40歳前後。ですが、20代でなる人もいます。

−−自覚症状はあるのですか?



北出 腫瘍ができる位置や大きさによって、症状はかなり異なります。まったく症状がない人から、手術が必要な人まで、その症状はさまざまです。筋腫の圧迫によって、頻尿や腰痛になる場合もあります。あとは月経の量や日数が多くなる過多月経などですね。

−−どのような検査でわかるのですか?

北出 超音波検査によって発見されます。より詳しく診る必要がある場合、MRI(磁気共鳴画像化装置)検査などをすすめられる場合もあります。

できる位置によって筋腫の種類はさまざま

−−子宮筋腫にはいくつか種類があると聞きました。



北出 子宮の外側(漿膜=しょうまく=下筋腫)、子宮の内側(粘膜下筋腫)、子宮の筋肉の中(筋層内筋腫)など、筋腫のできる位置によって分類されます。

−−それぞれどういった症状が見られるのでしょうか。

北出 漿膜下筋腫は、筋腫がかなり大きくなるまで症状が出ません。そのため気がつきにくく、見過ごされてしまうことが多いのです。筋腫が大きくなって周りの組織を圧迫するようになると、頻尿や下腹部の痛み、腰痛などの症状を引き起こすこともあります。

 粘膜下筋腫は、子宮の内側に向かって大きくなるため、子宮内膜の面積が増えます。過多月経やそれにともなう貧血、また着床障害など不妊や流産の原因になることがあります。筋腫がそれほど大きくならなくても症状が悪化しやすく、手術が必要になることが多いのです。

 筋層内筋腫は、筋腫が小さいうちはほとんど症状がありません。しかし、大きくなって子宮の内側を圧迫するようになると、過多月経や流産、早産、不妊の原因になります。

治療法の選択はライフプランや年齢などを考えて

−−どのような種類の筋腫でも治療は必要なのでしょうか。

北出 いいえ。基本的に子宮筋腫は命に関わる病気ではないため、それぞれの状況によって本当に治療が必要なのかどうかを見極めます。判断基準となるのはまず、つらい症状があるのかどうかということ。筋腫自体がそれほど大きくなくてつらい症状がなければ、ほとんどの場合、特別な治療はせずに経過をみることが一般的です。これは単に何もしないということではなく、定期的に検査をして、筋腫と共存するということです。

−−どのような治療法がありますか?

北出 治療の種類としては、手術と薬を用いた治療があります。また、手術と一口にいっても、子宮を取ってしまう方法と、子宮を温存しながら筋腫だけを取る方法があります。

 また、薬を用いた治療には子宮筋腫を一時的に小さくする方法と、症状を和らげる方法があります。

−−どの治療法を選べばよいのか、判断が難しそうですね。

北出 治療方法を選択する際に重要なのは、結婚や仕事、子育てなどのライフプランや年齢などの条件です。

 症状がある場合でも、これから妊娠、出産を控えた年齢であれば、筋腫だけを取る手術を選択することになります。出産の希望がなかったり、閉経に近い年齢の場合は、子宮を全摘出することが筋腫の再発やがんに発展するリスクを減らすことになります。

−−薬で治療するメリットを教えてください。

北出 閉経が近い年齢の方は、ホルモン療法で閉経状態にして筋腫を小さくし、そのまま閉経にもち込んで手術をせずにすませる場合があります。ただ、このホルモン療法で副作用が出る、抵抗があるといった人は、過多月経を緩和するピルの服用、貧血を改善する鉄剤の服用など、症状を和らげる方法を選ぶこともあります。

何通りもある治療法 症状や状況に応じて柔軟に対処を

−−手術や薬を用いた治療について、詳しく教えてください。

北出 手術は大きく分けて子宮を取ってしまう子宮全摘術と、筋腫のみを取る子宮筋腫核出術があります。

 いずれの場合でも、おなかを1cm以上切る開腹手術、内視鏡を使った腹腔鏡手術というように、手法が分かれます。



 腹腔鏡手術や、内視鏡を膣から入れて筋腫を切除する子宮鏡手術は、体への負担が最小限で済みます。手術後の回復も早いため、治療法として選択する人も増えています。

−−ホルモン療法とは具体的にどんな薬を使うのですか?

北出 ホルモン剤は、脳の下垂体に作用して、エストロゲンの分泌を抑えるため、月経が止まり閉経状態になります。すると、筋腫の成長が抑えられ、筋腫が一時的に小さくなるのです。ホルモン剤は、点鼻薬の場合と注射をする方法があります。

 ただし、半年間使用したら半年休む必要があり、長期間の使用はできません。使用しない間は筋腫の大きさが元に戻るので、筋腫の根本的な治療にはなりません。そして使用中はのぼせやほてりといった更年期障害のような副作用が起こる人もいます。

−−治療法は一つではないのですね。

北出 子宮筋腫自体は恐れる病気ではありませんが、まれに悪性の腫瘍(肉腫)である場合もあります。自己判断で放置せず、医師の診断を受けることが大切です。

 また、治療を選ぶ際の判断は女性の人生や価値観と深く関わりがあります。後悔のないよう、さまざまな可能性を考え、医師と相談しながら治療法を選びましょう。

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きたで・まり 順天堂大学医学部卒業後、順天堂大学産婦人科へ入局。2007年より現職。婦人科全般にわたる診療を行っており、手術においては腹腔鏡を専門とする。


引用元:
正しく知れば恐れることはない!子宮筋腫(毎日新聞)