何度裏切られても見た目で人を信頼し続ける高齢者の傾向を調べるため、お金の投資を模した心理ゲームを利用した実験がおこなわれました。本実験をおこなったのは、神沢 博 研究科長(名古屋大学大学院 環境学研究科)と、鈴木 敦命 准教授(心理学講座)の両名です。
私たち人間は、信頼できる人がどのような顔をしているか。また、信頼できない人がどのような顔をしているかについて、共通のイメージを持っています。
しかしながら、そうしたイメージはあてになりません。「信頼できる顔」をした人が本当は悪い人だったり、「信頼できない顔」をした人が、本当は良い人だったりすることがよくあります。
そのため、人を信頼するか否かを決める際には、顔の見た目ではなく、その人が過去に実際どんなことをしてきたか(自分に協力してくれたか、裏切ったかなど)に基づいて、判断することが肝要です。
顔の見た目に頼っていると、「羊の皮を被った狼」に騙され続けます。
つまり、人の信頼性を判断する際に、顔の見た目と過去の行為のどちらに重きを置くかは、詐欺被害の遭いやすさと密接に関係してくるということです。
本研究では、65歳以上の高齢者と主に20代の若年者を参加者とする心理実験をおこない、人の信頼性を判断する際に顔の見た目と過去の行為から影響を受ける程度を調べています。
《研究内容》
◯ 36名の高齢者(男性17名,65~79歳)と、36名の若年者(男性17名,19~30歳)を参加者とする心理実験をおこないました。
◯参加者にはまず、「投資ゲーム」という架空の投資に取り組んでもらいました
このゲームでは、コンピュータ画面に「合計16名の顔写真」が1枚ずつ表示されます。参加者は、それぞれの人物にお金を預けるか否かを決めます。
半数の人物は、預けたお金を必ず倍返ししてくれる「良い人」。残り半数の人物は、預けたお金を必ず横領する「悪い人」です。
参加者は、それぞれの人物について「投資するか否かの判断」を4回おこないます。そして、預け金が増える、または横領される経験を繰り返し、誰が良い人で誰が悪い人かをおぼえます。
◯ 次に、投資ゲームに関する記憶のテストを実施します。
投資ゲームに引き続きおこなわれる記憶のテストでは、コンピュータ画面に一枚ずつ表示される合計24名の人物(投資ゲームに登場した 16名の人物 + 登場しなかった 8名の人物)の顔写真を見ていきます。
参加者は、それぞれの人物が「投資ゲームに登場した良い人」、「投資ゲームに登場した悪い人」、「投資ゲームに登場しなかった人」のいずれに当てはまるかを回答します。
《実験結果・まとめ》
記憶テストの回答を特別な統計手法である MPTモデルを用いて統計的に分析した結果、高齢参加者においてのみ、「顔の見た目で良い人と悪い人を区別する傾向」がみられました。
つまり、高齢参加者は、信頼できない顔の人よりも、信頼できる顔の人を良い人だと回答しやすいという結果です。
投資ゲームでは、信頼できる顔の人、信頼できない顔の人、どちらも同じ頻度で参加者はお金を横領されていました。
つまり、顔の見た目は、良い人と悪い人の区別に役立たないことを参加者は何度も経験した状態でした。
本研究成果は そうした状況にもかかわらず、高齢参加者は、顔の見た目で人の信頼性を判断し続ける傾向を示しています。
本研究で用いた架空の投資ゲームに限らず、現実社会においても、見た目は人の信頼性を判断する上で有効な手がかりとはいえません。
以上の研究成果は、高齢者の詐欺被害に関係する心理学的リスク要因の一つを明らかにしたものと言えます。被害の予防・啓発に向けた今後の取り組みに役立つものと期待されます。
本研究成果は、米国老年学会誌「Journals of Gerontology Series B: Psychological Sciences and Social Sciences」のオンライン版(Advance Access articles)に平成28年3月30日(米国東部時間)付けで掲載されました。
『出典』
Persistent Reliance on Facial Appearance Among Older Adults When Judging Someone’s Trustworthiness
引用元:
何度裏切られても、人を見た目で判断するのか?高齢者の傾向調査がおこなわれました(imedi)