子どもを育てるということは、やりがいや楽しみを得られることから見ると、人生の一大イベントといえる。その一方で、特に乳幼児の間は、夜中頻繁に起こされる、絶えず注意を払い最優先で世話をする必要があるなど、大変に感じることも多く、ストレスを感じやすい。

 しかし、寿命に関してのみ言えば、子どもを生むことはマイナスよりもプラス面のほうが多いようだ。カナダで実施されたある研究によると、より多くの子どもをもつ女性ほど、老化が遅くなることが分かったという。

子どもの数と老化 テロメアの長さで分かる
 カナダのサイモンフレーザー大学の共同研究チームは、生んだ子どもの数によって老化現象と深く関わる「テロメア」の長さに変化があるかを調査した。

 テロメアとは、DNAの末端を覆うキャップのようなもので、DNA中の染色体を保護する役割を持っている。このテロメアは、細胞分裂が起こるたびに短くなる。そして、ある一定の長さを下回ると分裂は止まり、細胞の老化が始まるのだ。これが老化現象の一因ではないかと考えられている(※1)。

マヤの部族が「子どもの数と老化の関係」の調査に協力
 調査に参加してもらったのはマヤの一部族であるカクチケル族の女性75人。

 研究開始時の2000年は唾液から、終了時の2013年は頬の内側の粘膜からテロメアを採取し、その長さを測定した。測定には、一般的に用いられる特殊な比率が使われ、子どもの数は調査期間の13年間に生まれ、終了時まで生存していた場合のみカウントされた。
 

子どもが増えるほど老化スピードが減少!
 研究の結果、参加した女性全員において、2000年時のテロメアの長さが平均2.75だったのに対し、2013年には平均1.53まで短くなっていた(※1)。

 しかし、子どもを生んだ女性のテロメアは1人生むごとに平均0.059長くなり、生んだ子どもの数が多い女性ほどテロメアが長かったことが分かったのだ(※2)。

 つまり、子どもの数が増えるほど、老化のスピードが遅くなっている、ということだ。

妊娠中に抗老化ホルモンが激増!
 より多くの子どもを生むほどテロメアが長くなる理由の1つとして、研究者たちは「エストロゲン」に含まれる成分の一種、「エストラジオール」のはたらきによるものではないかとの仮説を立てている。

 エストロゲンは月経や妊娠に影響を与える女性ホルモンで、エストラジオールは一般的に、卵巣や子宮の発育を促す成分として知られている。また、活性酸素を体が解毒できない状況からテロメアを保護し、テロメアの活動を維持する酵素の活動を活性化する役割もあるという。

 このエストラジオールの量は、妊娠中に劇的に増えるのだ(※1)。

 子どもを生んだからこそ若くいられるというのは、何ともステキな話だ。この事実が広く知られ、金銭的な心配をすることなく子どもを生み育てられる環境がさらに整えられたならば、少子化にも歯止めがかかるかもしれない。子どもを生むべきか迷っている方は、この新たなメリットもぜひ考慮に入れてみていただきたい


引用元:
子どもが多い女性ほど老化が遅い!? 妊娠中に抗老化ホルモン激増(CIRCL)