ブラジルなど中南米で流行する「ジカ熱」が胎児の小頭症を引き起こす恐れがあるとして、警戒が強まっている。だが、「小頭症」を引き起こす恐れがあるとされる感染症はジカ熱だけではない。専門家は「今の時期はジカウイルスを媒介する蚊は日本にいない。それよりも、妊婦は日常生活で感染する感染症に気をつけてほしい」と呼びかける。(道丸摩耶)



 今回のジカ熱の流行を受け、北海道大の宮松雄一郎特任助教らが行った研究では、妊娠初期にジカ熱に感染した場合、胎児が小頭症になる確率は14〜47%程度と高い。しかし、日本産婦人科感染症学会理事で三井記念病院産婦人科の小島俊行部長は「ジカ熱で広く知られるようになったが、小頭症は以前から感染症によって引き起こされることが知られていた」と語る。

 小島氏によると、胎児の小頭症を引き起こす感染症としては、サイトメガロウイルス感染症▽風疹▽トキソプラズマ感染症−がある。

 サイトメガロウイルスは感染者の唾液や尿などに触れることで感染し、乳幼児が多くかかるが、感染してもほとんど症状がない。1980年代には成人の95%が幼少期に感染するなどして抗体を持っていたが、現在は7割程度に下がっているとされる。

妊娠中の女性が初めて感染して胎児が発症した場合、そのうち約半数が小頭症になるとされる。小島氏は「子供の食べ残しを、妊娠中の母親が食べることで胎児にうつることがある」と指摘。ワクチンや治療薬はないため、妊娠中は上の子供の鼻をかませたりおむつ替えをしたりした後は手洗いが重要だ。

 サイトメガロウイルスのほかにも、妊娠中に感染すると胎児に白内障や難聴、心疾患などの「先天性風疹症候群」を引き起こす風疹でも、小頭症がみられることがある。また、牛肉や土などに含まれる寄生虫「トキソプラズマ」に妊婦が感染することでも、子供が小頭症になることがある。小島氏は「風疹は予防接種があるので、ワクチンを打つことが重要だ。トキソプラズマは火が十分に通っていない肉を食べない、土いじりをしないなどの予防策を取ってほしい」と注意を呼びかけている。


引用元:
小頭症…ジカ熱だけじゃない 専門家指摘 妊婦の感染症にご注意(産経ニュース)