子宮頸(けい)がんのワクチン接種による副作用を訴える女性たちが、国と製薬会社を相手に損害賠償を求める集団訴訟を起こす。激しい体の痛みなど、深刻な健康被害の実態と原因の解明につながり、幅広く救済、支援が進むことを期待したい。

 原告には全国から10、20代の12人が加わる。弁護団は今後さらに参加を募り、東京、名古屋など4地裁に同時に提訴するという。

 「人生が変わってしまった」「十分な治療を受けられず、学校にさえ行けない被害者がいる現実を知ってほしい」―。原告に加わることを決めた高校生や大学生は記者会見で口々に訴えた。

 重い症状のため、当事者の中には進学や希望する仕事に就くのを諦める人もいる。治療費の負担も重い。国の動きが鈍く、被害者が置き去りにされてきたことへの不信感が提訴の背景にある。

 ワクチン接種は2010年から国が助成を始め、13年4月からは法定の定期接種として小6から高1の女子が無料で受けられるようになった。が、その2カ月後に接種の呼びかけを中止した。重い副作用の報告が相次いだためだ。

 14年11月までに接種したおよそ340万人のうち2600人近くが副作用を訴えた。手足のまひ、けいれん発作、記憶障害、視野の欠損など症状は多様で、重複する人も多い。厚生労働省は追跡調査も行ったが、被害の実態が十分につかめているとはいえない。

 予防接種による健康被害は、医療費などを支給する公的な救済制度がある。ただ、因果関係の特定が難しいとして審査が止まった時期があり、支給が認められたのは2月までに80人余にとどまる。

 原因は明確になっていない。厚労省の専門部会は14年、不安や緊張が体の不調として現れた「心身の反応」との見解を示したが、専門医から異論が出ている。免疫機能や脳・神経系に障害が起きる新たな病態とする見方もある。

 子宮頸がんは国内で年間およそ1万人が発病し、3千人ほどが死亡している。日本産科婦人科学会などは、予防のため、接種呼びかけの再開を求めている。

 とはいえ、子どもや親が不安を抱えた状況のまま再開すべきではない。原因の究明や治療体制の充実に力を注ぐ必要がある。

 国は裁判で、かたくなな姿勢に終始せず、当事者の声に向き合ってほしい。不信を解くことこそが求められる。被害の救済と支援に向け、司法の判断とは別に、取り組みを強めなくてはならない。

引用元:
子宮頸がん 不信を解くことこそ(信濃毎日新聞)