体質や症状に合った漢方薬の使用は時として大きな治療効果をあらわします。ここでは二日酔い、頭痛、吐き気など主に「水」に関わる漢方薬の五苓散(ゴレイサン)について解説します。


◆ 五苓散(ゴレイサン)の構成生薬と利水作用について

五苓散は構成生薬として沢瀉(タクシャ)、蒼朮(ソウジュツ)、猪苓(チョレイ)、茯苓(ブクリョウ)、桂皮(ケイヒ)を含み、五苓散の名前の由来は五種類の生薬と主薬となる猪苓からとったものです。(五味猪苓散が詰まってできた名前とされています)

医療用医薬品としての効能・効果は「口渇、尿量減少するものの次の諸症:浮腫、ネフローゼ、二日酔い、急性胃腸カタル、下痢、悪心、嘔吐、めまい、胃内停水、頭痛、尿毒症、暑気あたり、糖尿病」となっていて非常に多様です。

薬効薬理試験においてもアルコール代謝改善作用、利尿作用、消化管運動亢進作用が確認されていて、大人から子供まで幅広い年齢層で使われている漢方薬の一つです。

構成生薬の中でも中心となる猪苓(チョレイ)は、利尿作用、抗腫瘍作用、血小板凝集増強作用などをあらわすとされ、主に口渇や排尿障害などの改善が期待できるとされています。他の生薬についても、沢瀉(タクシャ)には利尿作用などにより排尿回数(過多又は減少)・めまい・口渇などに対して改善作用、蒼朮(ソウジュツ)には水分代謝の異常などを改善する作用、茯苓(ブクリョウ)には尿量減少やめまいなどの改善作用といったように水分貯留に関わる改善作用が期待できる生薬含まれています。もう一つの構成生薬である使われる桂皮(ケイヒ:香辛料のシナモンとしても使われる)も末梢血管拡張作用、鎮静作用、発汗解熱作用などにより頭痛や発熱に対する改善作用の他、水分代謝調節作用なども期待できる生薬とされています。

このように主に体内の水分貯留に関わる改善効果が期待できる漢方薬が五苓散であり、「水」が関わる様々な症状に対して使われています。



◆ 二日酔い、頭痛、つわりなど五苓散による改善が期待できる症状について

先ほど五苓散の効能・効果を示しましたが、非常に多岐に渡り効果が期待できることがわかります。ここでは五苓散の効果が期待できる症状についていくつか例を挙げてみていきます。



▪️二日酔い

二日酔いはアルコールが体内で分解される段階でつくられるアセトアルデヒドが主な原因となり頭痛や吐き気などがあらわれますが、体内の水分貯留バランスが崩れていることも多々あります。

五苓散自体が元々、急性胃腸炎で吐き気や下痢などがある症状に使われてきたこともあり、消化器症状が主な症状の一つになる二日酔いには適する漢方薬になります。特に二日酔いで喉が渇いて水分を欲する割に尿があまり出ないなどの場合には五苓散の利水・利尿作用などを考慮すると、より適する症状であるともいえます。



 ▪️頭痛

頭痛がおこる原因は様々ですが、頭痛に合わせて吐き気や嘔吐などの症状を伴うこともあります。五苓散の効能・効果には頭痛がありますが、利水作用などによりめまい、吐き気などの頭痛に伴う症状においても改善効果が期待できます。特に口渇、尿量の増加・減少、むくみなどを伴うような頭痛に対して改善効果が期待できるとされています。片頭痛をはじめ、血液透析時に主に血液の浸透圧の変化によって引き起こされる頭痛や吐き気などに対しても改善効果が確認されています。

 

 ▪️つわり(妊娠悪阻)

妊娠中では水分の代謝に影響があらわれ腹部膨満感や吐き気などを引き起こす場合があり、これがつわりの症状の一つになります。また膀胱症状として尿が出にくくなることもあり、これらの症状に五苓散が適する場合があります。つわり(妊娠悪阻)があらわれる時期は主に胎児の器官形成期にあたることもあり、漢方薬においても慎重に使用すべきとされていますが、使える薬剤が限られる中で妊婦の健康維持などに対して有用な選択肢の一つになっています。





その他、五苓散は暑気あたり(夏バテ)や慢性硬膜下血腫などにも使われています。また成人ばかりでなく小児の下痢などにも使われ、特に吐き気が強く内服できない消化器症状などでは五苓散をお湯で溶かして肛門から挿入する方法が取られる場合もあります。このように体内の「水」に関わる五苓散は漢方薬の中でも特に多様な漢方薬の一つと言えるのではないでしょうか。


引用元:
二日酔い、頭痛、妊婦のつわりに効果あり!? 漢方薬の五苓散(ゴレイサン)について解説(MEDLEY)