「あなたの子どもが産みたいの」。そんな言葉から始まった僕らの結婚。そして互いに39歳となる2011年、ようやく不妊治療クリニックの門を叩くことになった。だが、現実はそう甘くはなかった。

連載第3回目の今日は、3年間にも及ぶ不妊治療の末に、やっと子どもを授かった『俺たち妊活部―「パパになりたい! 」男たち101人の本音』の筆者・村橋ゴローが、自身の妊活エピソードを元に“不妊治療を夫婦で長く続けるために夫がすべきこと”についてお話します。



■待つこと2時間以上は当たり前!? 「不妊治療の専門医院」の現実

2011年梅雨のころ、僕らは不妊治療の専門医院に通うことにした。互いに39歳になる歳で、不妊治療においてこの年齢からのスタートは遅すぎるものだった。

僕たちが選んだのは、都内のYクリニックというところだったのだが……これが行ったら驚いた! まず朝9時のオープン時に到着し、機械から吐き出される受付シートを見ると、その番号は“86番”。

待合室に目を移すと、かなり広めのフロアにもかかわらず、敷き詰められたソファは満席状態。自分の順番を待つこと、1時間。やっと番号が呼ばれ、ようやく治療に移るのか……と思えば、治療を施すフロアを指示されただけ。

そして指示されたフロアに移動すると、そこも人、人、人。まるで野戦病院のよう。そこでもまた1時間以上待たされ、ようやく治療を仰ぐこととなります。

「番号札86番の方〜」と、事務の方が自分の番号を呼んでくれるわけではなく、フロアに数個設置された5分置きに変わるパネルに表示される番号を絶えずチェックしなければならない。これが90分ほど続くこともあるのだから正直しんどい。



■体外受精、1回のお値段は……50万円!

2〜3時間待って、ようやく診察へ。朝9時に行って、会計が済んだのが午後3時ということもあった。これが歯医者のように「次は2週間後になりますが、どうします?」なら、まだいい。すべては卵の状況に因るので、「次は明後日」「次は3日後」と、こちらに選択権はない。

そして時間帯も、これまた歯医者のように「12時はムリなので、16時とか空いてます?」などとも聞けない。一番は卵の進退にかかっているので「明後日の11時に来てください」とピンポイントでの来院がマストなのだ。働く人間にとってこれがどんなに困難かことか。

そして、お値段と言えば、1回の通院で数万円、それを7〜8回繰り返し体外受精の段となる。自治体の控除もあるが、体外受精は基本的に1回50万円かかる。それでもわが子をお腹に宿さんと多くの人がクリニックの門を叩くのだ。

■不妊治療で「男」ができる、たったひとつのこと

急なスケジューリング、高額な治療費。それなのにいつ妊娠できるかもわからない、不妊治療。というか、妊娠できる確証などどこにもない。

それでも、この治療を何年も頑張ってこれたのは、それは夫婦ふたりが互いの心に寄り添っていられたからだ。

男性不妊でもない限り、男がクリニックに行く必要はさほどない。人工授精・体外受精という高度な治療でも、場合によっては自宅で採精した精子を妻に手渡せば、事足りてしまう。でも僕は妻から通院日を聞き、毎回連れ添った。

不妊治療で痛い思いをするのは、当たり前だが女性だ。結果の伴わない毎日にストレスもどんどん蓄積される。それを軽減できるのはパートナーである自分しかない。共に通い、長い待ち時間で彼女を笑わせる。それが夫にできる唯一の誠意に思う。



ある芸人さんから、こんな話を聞いたことがある。その昔、“スカブラ”という人たちがいたという。彼らは炭鉱夫に交じって、炭鉱に入っていく。しかしスカブラは仕事はしない。ただスカブラは冗談を言い、炭鉱夫を笑わせるのみ。しかしこのスカブラがいないと、作業効率が著しく落ちるという。

不妊治療においての男性とは、このスカブラのような存在だと僕は思う。苦しむ妻の心に寄り添い、時に励まし、時に笑顔をつくってあげる。男にはこれしかできない。これこそ不妊治療を長く続ける秘訣に思う。



引用元:
待つこと2時間以上は当たり前!? 「不妊治療の専門医院」の現実<連載第3回>(It Mama)