喫煙は妊婦と胎児にはよくないということは知られていて、妊娠をすれば禁煙をするように指導されます。

しかし、妊婦自身が喫煙をしていなくても、周りの家族が喫煙していると妊婦が副流煙を吸ってしまうことになり、それもまた妊婦や胎児に影響を与えます。

今回は妊娠中の喫煙やたばこの煙が母体や胎児に与える影響についてご紹介します。

そもそもたばこってどんな影響が?
妊娠中以外も喫煙が体に与える具体的な影響とは?
たばこから出てくる煙にはなんと何千という化学物質がありますが、その中には体に害を与える有害物質も多く含まれています。

さらにその中に多くの発がん物質が含まれているので、たばこを吸えばガンにかかりやすくなるということはよく知られています。

またたばこの成分として最もよく知られているニコチンには依存性があり、なかなかたばこが止められなくなってしまいます。

たばこの煙が原因となって起こるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)は、息切れがしたり咳や痰が増えるなどの症状が代表的です。

COPDは合併症の多い病気で、糖尿病、心臓病、動脈硬化や胃潰瘍など様々な病気を引き起こします。妊婦でなくても、喫煙はリスクのあるものだということがわかりますね。

妊娠中の喫煙が胎児に与える影響
酸素や栄養が胎盤、胎児に行き届かなくなる
それでは妊娠中に喫煙すると、胎児にはどのような影響があるのでしょうか?

たばこの成分であるニコチンは、胎盤や子宮の血管を収縮させ、胎盤の血流も減少させます。また喫煙により発生する一酸化炭素は、血液の中のヘモグロビンと結合する性質があります。

そうすると本来であればヘモグロビンと結合して運ばれるべきである酸素が運搬されず、血液中で酸素が不足してしまう可能性があります。

このようにたばこの成分により酸素や栄養が行き届かなくなり、胎盤機能が低下してしまいます。もちろん胎児にも十分な酸素や栄養が届かなくなってしまうのです。

母体にも胎児にも大きなリスク!常位胎盤早期剥離
妊娠中の喫煙によって引き起こされるものとして一番にあげられるのは常位胎盤早期剥離です。通常胎盤は分娩した15〜30分程度後に自然に子宮から剥がれて外に出てきます。

ところが胎児が娩出される前に胎盤が剥がれてしまうことを常位胎盤早期剥離といいます。常位胎盤早期剥離は胎児仮死、胎児死亡、さらには母体死亡にもつながる可能性のある恐ろしい疾患です。

常位胎盤早期剥離は喫煙による胎盤機能の低下により引き起こされる一番恐ろしい症状です。

胎児が危険!早産時期の前期破水
前期破水とは、出産時に陣痛がきて破水するのではなく、陣痛が始まる前に破水してしまうことを言います。

本来ならば胎児を包む卵膜が破れることによって中の羊水が流れ出すのですが、その前に破水すると胎児を守っている無菌状態の羊水がなくなってしまい、胎児があらゆる危険にさらされることになってしまいます。

まだ胎児が充分に成長していない場合にはできるだけ母体に長くいられるように、感染症予防のため抗生物質を投入したり、子宮収縮抑制剤を投与することもあります。胎児の容態が悪ければ帝王切開ですぐに出産させることになります。

前期破水の原因としては多胎妊娠、羊水過多、子宮頚管無力症なども考えられますが、妊娠中の喫煙も大きな原因と考えられています。

妊娠中から産後までリスクが!前置胎盤
通常胎盤は受精卵が着床した位置に形成され、子宮底部(子宮の一番奥)に形成されることが多いです。

しかし、胎盤が低い位置で形成されてしまい、子宮口にかぶさってしまうことがあります。これを前置胎盤といいます。子宮口をふさいでいるため、自然分娩ができずに帝王切開となります。

また、前置胎盤は妊娠中に大量出血を起こしたり、子宮の筋肉に食い込んでしまう癒着を起こしてしまうことがあり、母体と胎児に危険をおよぼすこともあります。

喫煙により子宮の血液の循環が悪くなることによって前置胎盤が起きる場合があると考えられており、喫煙がリスク因子の一つとされています。

低体重児や胎児発育の阻害
喫煙によって胎盤の機能が低下、胎児に酸素や栄養が不足してしまうことは、胎児をあらゆる危険にさらし、生まれた後でも治療が必要となります。

低体重児になったり、子宮内胎児発育遅延(IUGR)になることも喫煙による影響とされています。低体重児は出産時に2,500g未満の赤ちゃんのことを言います。

充分な発育をしないまま生まれてしまっているため、感染症や合併症をひきおこす可能性があり、生まれた後に治療が必要となります。

子宮内胎児発育遅延(IUGR)は早い時点でわかれば喫煙をやめるなど原因を取り除けば成長を取り戻すこともできます。

しかし最悪の場合早期出産をしてNICU(新生児特定集中治療室)での治療が必要になります。

先天性奇形のや口蓋裂口唇裂
口唇裂や口蓋裂は数百人にひとりと言われるそれほどまれではない先天性奇形ですが、この奇形の要因もたばこと関わりがあるのではと言われています。

上唇が切れている口唇裂、赤唇部から部分的に裂けたり、外鼻孔内まで裂けるケース、上あご奥の口蓋まで裂けている唇顎口唇裂など様々です。

妊婦が喫煙をしていたり、父親がヘビースモーカーだった場合には卵子や精子にそれぞれ染色体に異常を起こしたり、遺伝子異常を起こすのではと考えられています。

先天性心疾患リスク
先天性心疾患は生まれつきの心臓構造異常です。心臓は妊娠初期に形成されますが、母親が妊娠していることに気付く前に心臓が形成される可能性もあります。

この時期に母親が喫煙していた場合、先天性心疾患にかかるリスクが高まってしまうのです。

手足の欠損
赤ちゃんを出産した後、両親がはじめに確認する手足の指の数。喫煙の影響により、手足の指が増える多指症、指が減る少指症、指が癒着する合指症のリスクも高まると言われています。

生まれた後に手術をしなくてはならなくなり、手術は全身麻酔で行われることもあるため生後すぐには行うことができません。大変な手術だと体が大きくなってから行う場合もあり、子どもには大きな負担となってしまいます。


妊娠中の喫煙が母体に与える影響
子宮がんのリスク、お肌や口にも影響が
喫煙は胎児にだけではなく母体にも様々な影響を与えます。妊娠中は免疫力、抵抗力が低下するため、妊娠をしていない時期よりも喫煙の影響をうけやすいとされています。

まず一番にあげられるのは子宮がんのリスク。喫煙している女性は喫煙していない女性に比べて子宮がんで死亡するリスクが高くなるといわれています。

その他にも、血管が収縮することにより、メラニン色素の代謝が悪くなりシミ・そばかすができやすくなります。また、口臭がしたり歯槽膿漏になったりと様々なトラブルのもとになるのです。

妊娠中は使ってはいけないお薬なども多く、色々な症状が出ても治療することがなかなか難しくなるケースもあり、注意が必要です。

受動喫煙もリスクが
家族も協力を
妊婦本人が喫煙しなくても、たばこの先から出てくる副流煙を吸うことも、喫煙と同等またはそれ以上の有害物質を吸い込むことになります。

副流煙は主流煙よりも2〜50倍有害物質を含んでいるとも言われます。そのことをふまえると、妊婦の周囲にいる家族や友人達も充分に注意しなければなりません。

妊娠したら、赤ちゃんを守るために、家族には禁煙してもらうか、それが無理なら外でたばこを吸ってもらうようにしましょう。



引用元:
妊娠中の喫煙の影響とリスク 母体と胎児への影響は?(cozre)