さて、皆さんにお話しする機会が少なくなってきたので、今回は、私が日本産科婦人科学会で10年以上携わってきた日本の生殖補助医療(ART)のデータ集積・解析結果についてお話ししようと思います。
男女で知って欲しい「妊活」
日本産科婦人科学会は、国内のARTに関するデータを集めて分析し、ホームページに掲載しています。情報は毎年更新され、昨年9月には2013年治療分の成績を載せました。会員でなくても誰もが見ることができるようにしています。
http://plaza.umin.ac.jp/~jsog-art/別ウインドウで開きます
このページには「機関誌掲載治療成績」と「ARTデータブック」として成績をグラフ化したものを掲載し、皆さんが利用しやすいようにしています。「ARTデータブック」の「2013年PPTX版」<http://plaza.umin.ac.jp/~jsog-art/2013data_201601.pptx別ウインドウで開きます>が最新の成績グラフです。これについて説明していこうと思います。
1枚目のスライドにあるグラフは、日本における年間の生殖補助医療治療数の変化です。治療数を治療周期数と表記しています。
写真・図版1枚目のスライド(ARTデータブック 2013年 PPTX版 から)
この治療には大きく分けて3つあり、「FET」は凍結融解胚(はい)移植(いったん凍結保存した胚〈受精卵〉を解かして子宮に戻す)を用いた治療、「ICSI」は採卵治療周期に顕微授精を行った治療、「IVF」は採卵治療周期に通常の体外受精を行った治療のことをさしています。
2013年の生殖補助医療の総治療数は、368,764となりました。各年の個々の治療数を知りたい方は、3枚目のスライドにそれぞれの数値を記載しています。
2枚目のスライドは、生殖補助医療の治療で出生した児の数を表しています。この数値も年々増加しており、2013年には、42,554人が生まれました。この数値は日本全体の出生数の約4.3%を占めています。
写真・図版2枚目のスライド(ARTデータブック 2013年 PPTX版 から)
特に注目していただきたいのが緑部分、すなわち凍結融解胚を用いた治療で出生した児の割合がとても多いことです。体外受精のときは複数の卵子を採取しますが、子宮に戻す受精卵はいまは原則として1個なので、残りは次の周期に向けて凍結保存するのが一般的になっています。また、採卵した周期ではすべて凍結保存するケースも増えています。そうしたことがデータで示されていると思います。
続いて、スライドの6枚目をみてください。これは2013年に行われた生殖補助医療の成績です。年齢で分け、妊娠率、生産率、流産率を示しています。
写真・図版6枚目のスライド(ARTデータブック 2013年 PPTX版 から)
まず、緑の「生産率」をみてみましょう。これは「出産に至った治療数」を「治療開始からの治療総数」で割ったもので、出産という目標に対して治療がどれくらい成功したかを示したものといえます。グラフを見ると、生産率は32歳以降徐々に下降していくのがわかります。
今度は「流産率」をみてください。これは、「妊娠後流産した数」を「妊娠数」で割った数値で、「流産のしやすさ」を示します。ここでの妊娠とは、尿や血液で妊娠反応が出ただけではなく、超音波断層検査で胎嚢(たいのう=赤ちゃんを入れた袋)が確認された治療数をいいます。
流産率も32歳以降上昇します。43歳を超えると、妊娠してもその半分以上が流産することがわかります。詳しい数値は8枚目のスライドにあります。
日本全国から37万件近い治療を集めたデータですので、かなりの信頼性があると思います。みなさんにもこれらのデータを参照いただき、ライフプランなどに役立てていただければと思います。
<アピタル:男女で知って欲しい「妊活」・生殖補助医療 >
引用元:
《82》 データで見る日本の生殖補助医療(朝日新聞)