腫瘍の治療のため摘出した卵巣から卵子を採り、体外受精させた後に患者の子宮に移植して妊娠させることに、信州大医学部産科婦人科学教室(松本市、塩沢丹里(たんり)教授)の医療チームが16日までに成功した。患者は卵巣の腫瘍を再発した県内在住の30代前半の女性で、同日時点で妊娠4カ月になっている。同様の出産例は、世界で1例の論文報告にとどまり、国内ではないとみられる。今回と同様の患者は信大病院では年間数例あり、全国でも相当数あるとみられ、こうした患者が子どもを授かる道が開けた。
医療チームリーダーの岡賢二助教(信大生殖医療センター副センター長)によると、今回の患者は卵巣一つを以前に摘出し、残る一つの卵巣に腫瘍が再発した。こうした再発のケースでは、腫瘍の部分のみを手術で摘出する方法もあるが、完治を目指して卵巣を全て摘出するのが一般的という。今回は夫婦に出産への強い希望があり、卵巣を全て摘出し、その組織から卵子を採取して妊娠を目指した。
昨年秋に卵巣の摘出手術を実施し、摘出した卵巣の健全な部分から卵子を採取。体外受精で一般的な排卵誘発剤は、腫瘍を悪化させる危険性があるとして使わなかった。患者は手術時に月経3日目で、未熟だったが8個の卵子を採取した。卵子は1〜2日間の培養後に、体外受精(顕微授精)をして受精卵に。昨年末、女性ホルモンを患者に投与した後、凍結保存しておいた受精卵を子宮内に移植して着床、妊娠した=イラスト。
手術後の容体は順調という。岡助教は「腫瘍がある卵巣からの未熟卵の採取、体外培養、体外受精の医療技術を結集し、その全てがうまくいった」と説明。「妊娠の一方で病気の確実な治療もできた。一時は子どもを諦めないといけないと考えた夫婦には、とても喜んでもらえた」と言い、今後、同様の症例には「今回の方法を積極的に採用したい」としている。発表に向けて論文を準備中だ。
生殖医療を手掛ける自治医科大付属病院生殖医学センター(栃木県下野市)の鈴木達也准教授は「今回の治療技術自体は特別珍しいわけではないが、それぞれを組み合わせて、病気の根治と妊娠の可能性を残すことを両立させた発想が良い。今後、採用する病院が全国で増える可能性があるのではないか」としている。
引用元:
摘出卵巣の卵子で妊娠 信大チーム成功、国内初(信毎web)