子どもの肥満は、若くして心筋梗塞(こうそく)や糖尿病になるリスクを高めていることが分かってきた。発症リスクを減らすため、早めに専門の外来で生活習慣の改善を促す取り組みが重要視されている。子ども独自の基準づくりも進んでいる。

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 東京都板橋区の女児(9)は小学2年生だった2014年、健康診断で肝機能の異常を指摘された。GPTの値が72で、正常範囲の上限とされる35を大幅に超えていた。当時、身長は123センチで体重は35キロ(標準体重は24キロ)。糖分の多い野菜ジュースが好きで、ご飯を大人用の茶わん3杯分食べることもあった。

 ■ 専門外来で改善指導

 母親とともに日本大学板橋病院の小児生活習慣病外来を受診。受診時、標準体重との比較で出される「肥満度」は約43%で、「中等度肥満」だった。ご飯は毎食1杯ほどにして野菜を多く食べ、運動習慣をつけることなどを助言された。

 体重の記録を毎朝つけ、食生活の改善や体を動かす機会を増やした結果、肥満度は今年2月に約34%まで下がった。30%を下回れば、通院は不要になる。母親は「受診は食事を見直す良い機会になった」。

 子どもの頃に肥満があると大人になっても肥満になりやすい。40歳を下回るような年齢で心筋梗塞や2型糖尿病を発症するような場合も肥満を抱えていることが多いという。同病院で外来を担当する岡田知雄医師は「過度な肥満の子は、幼児期以降の早い段階で、体重を減らすことが重要」と指摘する。子どもでも、腹部の肥満に加え高血圧などがあれば、メタボリックシンドロームと診断される。

 外来では病気の家族歴や出生体重、妊娠中の母親の病気、幼児期の運動体験などを聞く。子どもの肥満の原因は、胎児期の環境を含めて様々で、個別に探る必要があるからだ。岡田さんは「家族の協力があり、高度肥満になる前に外来で助言を受ければ肥満は改善しやすい」と語る。

 ■ 日本肥満学会 新たな診断基準

 日本肥満学会が認定する子どもを対象にした肥満症専門病院は16年1月現在、全国に約20施設ある。

 同学会は14年、医学的な管理が必要な子どもを適切に見つけるための「小児肥満症ガイドライン」を改訂した。早期動脈硬化や肝臓に脂肪がたまる非アルコール性脂肪性肝疾患などを新たに診断の基準に加えた。


引用元:
子どもの肥満 心筋梗塞や糖尿病、高まるリスク(朝日新聞)