持っている卵子の数が少なければ、その方は妊娠しにくい。多くの方がそう感じていると思います。私も、「卵子の数が減ると妊娠しにくくなるので、卵子の数が多い若いうちに妊娠を考慮したほうがいい」と、講演会などでお話ししています。

 とはいえ、実際にご自身がどれほどの卵子を持っているのか、正確に知ることは困難です。そこで目安となるのが、AMH(アンチミュラリアン・ホルモン)というホルモンの値です。AMHは以前にも少し触れましたが、卵胞の顆粒膜細胞から分泌されるホルモンで、卵巣にある卵子の数を反映すると考えられています。つまり「このホルモンの値が低いと、卵巣にある卵子の数が少ない」ということになります。

 このホルモンに関して最近、興味ある論文に出会いました。AMHの値が正常な場合と低い場合とで、不妊治療の結果にどう影響するかを米国などのグループが調べたものです。

 研究では、不妊治療、それも体外受精などの生殖補助医療を行う方たちで検討しました。図をみてください。AMHの値が低かった5087人と、年齢が同じでAMHの値が正常だった1789人について、体外受精などの生殖補助医療を行った際の成績を比較しています。




写真・図版
Seifer DB, et al. Fertil Steril 105; 385-393, 2016 より

 本当は、AMHが高値の方たちと低い方たちをまず2グループに分けてから、自然に妊娠を試みてもらい、グループ間の違いを検討するのがよりわかりやすいと思うのですが、一般の方たちにこのような検討に参加いただくのは、なかなか難しいです。

 研究の結果です。体外受精のために治療を始めても卵胞が発育せず、採卵を断念しないといけなかった確率は、AMHが正常な方たちでは7.5%と低かったのに対し、低値の方たちでは38.6%もありました。また、採卵手術をしても卵を採取できなかったケースは正常値の方たちの0.06%でしたが、低値の方たちでは3.3%ありました。

 さらに、AMHの値が低い方たちでは、正常値の方たちと比べて、妊娠率や出生率などが低くなっていました。

 これらのことから、やはり、AMH値が低い方、すなわち、卵巣に卵子の数が少ない方は、妊孕性(妊娠しやすさ)は低めであると考えられます。

 卵子の数は個人差が大きく、たとえ若かったとしても少ない方がおられます。私どもの施設では、このAMHを測定してご自分の卵子の数を知り、人生設計、すなわち早めに妊娠出産を考えた方がよいのか、もう少し後にまわしてもよいのかを判断することに役立てていただく外来(AMH外来)を作り、皆さんの相談に応じています。


引用元:
《81》 卵子の数と妊娠のしやすさ(asahi.com)