被災3県の沿岸部の病院の状況

 東日本大震災からまもなく5年。人々の命と暮らしを守る医療の現場は今、どうなっているのか――。

「人口流出、働き手戻らず」 被災3県、介護人材が不足
被災地「心の健康」改善・悪化に二極化 「治療中断」も
東日本大震災から5年

 朝日新聞社は2月、震災当時に岩手、宮城、福島の3県の沿岸部にあった病院にアンケートを実施。廃止になった宮城県の1病院と福島県の避難指示区域で休止中の6病院を除く計110病院(震災後に診療所になったり移転したりした病院を含む)のうち、81病院が回答した(回答率74%)。結果から震災によって医療スタッフの不足に拍車がかかり、入院できるベッド数が減っている状況が浮かび上がった。

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 患者の受診状況や職員の勤務状況などで「現在、震災の影響を感じることはあるか」と尋ねたところ、回答した78病院のうち28%が「かなり感じる」、23%が「やや感じる」と答えた。影響を感じる事例として、岩手県の病院は「産業低迷で無職者や貧困者が増え、受診自粛による病気の重症化がある」、別の病院は「仮設住宅での生活によるストレスなどからアルコール依存症の患者が増加。高齢者の独居や仮設住宅での生活に伴う近隣トラブルでの入院が増え、退院が難しいケースが多い」とした。

 「医師不足で通常診療ができていないため受診が減っている」と回答したのは宮城県の南浜中央病院。「津波へのトラウマを持つ職員の退職や、県全体で医師、看護職が不足する中で、津波への不安から就職をためらう方もいる」と続けた。

 福島県の南相馬市立総合病院は近隣の医療機関の診療体制の縮小によって「本院に求められる医療の要求が大きくなっている」と感じているという。別の病院は「震災で疲弊しているため、頑張れない」とつづった。

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 震災の影響を感じる例として、複数の病院が挙げた医師や看護師ら医療スタッフの不足は、アンケートの別の設問に対する回答結果からも裏付けられた。医師不足だけでなく、看護師やその他の医療スタッフでの不足感が強いこともわかった。

 医師が「足りない」と答えた病院は岩手県で67%、宮城県で35%、福島県で78%と地域差が出た。津波で被災し5月に移転先で開院する岩手県立大槌病院は「医師の招請に努力しているが、被災地への着任希望者はほとんどいない」と書いた。

 一方、看護師が「足りない」と答えたのは岩手県53%、宮城県50%、福島県74%。コメディカル(薬剤師や臨床検査技師などの医療スタッフ)が「足りない」と答えたのは岩手県47%、宮城県45%、福島県61%だった。

 福島県の病院も「採用募集をしても被災地という理由で敬遠されることが多く、慢性的な人員不足」とつづった。

 複数の病院から国や県に支援策を求める声があがった。宮城県の南浜中央病院は医療スタッフ不足に対し、「全国規模での被災地への支援が必要」と訴え、別の病院も「1民間病院では難しく、行政の力を借りないとうまくいかない」とした。福島県の病院は「民間病院にも、医師及び看護師などの医療スタッフの支援を国や県が積極的に行うべきだ」。

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 こうしたスタッフ不足は、入院できるベッド(稼働病床)の数の減少という形でも影響が表れている。

 稼働病床は2011年1月末に1万4038床あったが、今年1月末に1万2310床に減っていた。医療圏別では岩手県の宮古医療圏で3割強減った。津波被害を受けた県立山田病院が入院を休止しているのが一因だ。94床減った県立宮古病院は主な要因に「患者の減少」を挙げた。

 宮城県の仙台医療圏では、3月末で閉院する東北公済病院宮城野分院で161床の減少。石巻・登米・気仙沼医療圏では、石巻市立病院の休止や旧石巻市立雄勝病院の廃止、旧女川町立病院の診療所化が影響した。福島県の相双医療圏では4割減った。市立病院など計4病院での減少が目立った。

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アンケートへの自由記述から

<スタッフ不足>

▼医師・看護師等医療スタッフの確保ができず基準ぎりぎりの人員で対応しているのでスタッフの疲労が大きい。(岩手県)

▼医師招請にも努力していますが、被災地への着任希望者は、ほとんどない状況です。(岩手県・県立大槌病院)

▼震災の影響ではないかもしれませんが、課題はとにかく看護師不足です。ハローワークやホームページで募集しても応募がない。やむなく紹介会社を利用していますが、手数料負担が一人90万円前後。それでも看護師の定数を充足できていません。(宮城県)

▼医師・看護師が不足しているため、いまだに1病棟が再開できない。全国規模で被災地への支援が必要と感じる。(宮城県・南浜中央病院)

▼看護職員やコメディカルを確保するためには、1民間病院では難しく、行政の力を借りないとうまくいかないと思います。看護職員の派遣などの措置がとられることを希望します。(宮城県)

▼医師、看護師の充足率的には満たしているが、年齢が若いスタッフが不足しており、そういった面でマンパワーの不足を感じることが多々ある。(福島県)

▼開業医が被災したことにより、震災前の6から震災後は2へと減少した。人口が減少している状況の中で診療科を維持していることは経営状況が難しくなっていく事が予測される。被災地の病院の重要性は増していくが、経営効率化との相反する要求をどうしていくべきか課題は多い。(宮城県・南三陸病院)

▼民間病院にも、医師及び看護師等の医療スタッフの支援を国や県が積極的に行うべきだ。(福島県)

▼震災前より医療機関が減少(廃院、休止)している中にあって、特定診療科(産科、整形外科、皮膚科など)の医療提供体制が不十分な状況にある。特に当院においては、整形外科の患者が多く、外来診療が厳しい状況にある。(福島県)

▼医療従事者の確保。医療を求める患者は多いが、それに対応すべき医療機関の人的パワーが不足している。(福島県・小名浜生協病院)

▼福島県内でも、太平洋に面した浜通り南部は今、医師不足が顕著であり、このまま他地域からの医師の応援がなければ、5年後くらい(医師の高齢化からくるリタイア)から病院やクリニックの閉鎖が立て続けに起きるでしょう。民間レベルでの医師派遣では追いつきません。34万人の生命を守るためにも、国の政策として他県からの医師派遣のシステム作りを早急に進めるべきだと考えています。(福島県)

▼もともと福島県の医師不足は全国平均から見ても深刻であったが、そこに震災の影響を受け、若い医師の県外流出が目立ち医師不足は顕著である。当院の医師も高齢化しており、高リスクを抱えながら地域医療を守っている。この医師たちがダウンした場合、住民への医療提供はますます厳しくなる。(福島県)

▼医師不足による救急搬送の遅れ。(福島県)

▼スタッフが不足し病床や施設の受入れ数が以前の状態には程遠く、半面、高齢者の避難先からの帰還率は高く震災後5年を経た現状においても国の大きな介入が必要であると思料します。(福島県・南相馬市立総合病院)


<受診状況>

▼沿岸部の精神科医療が復旧に時間がかかっており、当院で入院治療を行った患者さんが退院となり自宅から最も近い病院に紹介しても通院時間は2時間半以上も要する。被災地の精神科医療の再建が望まれる。(宮城県・青葉病院)

▼当院は精神科病院である。震災時からの入院・外来患者は減少傾向にある。(宮城県)

▼生活の貧困により高齢者の入院費未納が目立つ。家族による年金の使い込み等が震災前より多くなったように思う。(宮城県)

▼震災前は一定の患者数が保たれ経営に大きな支障はなかったが、震災後は患者数の減少等により収支が悪化した。地域で唯一の総合病院及び自治体病院としての役割は大きく、市民に良質な医療を提供し続けるためには経営の安定が不可欠であり、経営の立て直しが重要な課題となっている。(宮城県)

▼通常なら退院可能な患者も住宅事情(仮設住宅環境など)や、家族の県外避難により、在宅に戻れないケースも増えている。また、施設に紹介しても待機者多数のため退院が滞り、急性期病院からの入院を断らざる得ないことも多い。地域連携で退院支援を強化しているが年々厳しくなっている。(福島県)


<取り組み>

▼看護補助者に資格を取得してもらうための奨学金制度(准看護学校への通学)を設けている。(岩手県・希望ケ丘病院)

▼震災により診療所が閉鎖された島(2島)、および石巻市(他地域)に出来た仮設住宅の集会所に出向いて月1〜2回巡回診療を行っている。(宮城県・女川町地域医療センター)

▼当院での震災後の取り組みとしては、一時は周囲にて一般病棟が不足したことから一般病棟に切り替えたが、在宅・施設での療養が難しいことからケアミックスを取り入れて急性期から慢性期さらに介護等長い期間療養できる環境を整備した。(福島県)

▼被災し仮設住宅に居住している方に対し、毎週水曜日に患者送迎を行っております。(福島県・国立病院機構いわき病院)


引用元:
被災3県、沿岸部の稼働病床1割減 医療現場は人手不足(asahi.com)