花粉症の人にはつらいシーズンが到来しました。年々患者数は増加し、いまや都市部では3人に1人がスギ花粉症といわれます。すぐできる対策と、完治を目指す方法、花粉症治療の両輪を「花粉症の長期戦略と短期療法」(小学館文庫)の著書もある耳鼻咽喉科山西クリニック(東京都新宿区)院長の山西敏朗さんに聞きました。
それ、本当に花粉症? 発症のメカニズム
山西敏朗・耳鼻咽喉科山西クリニック院長 山西敏朗・耳鼻咽喉科山西クリニック院長
花粉症は、目、鼻、口に花粉が入ることで、目のかゆみ、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、のどのイガイガなどといった症状が出る病気です。この時期、典型的な症状が出ている皆さんにまずお勧めしたいのが、一度は、耳鼻咽喉科へ行って本当にスギ花粉症なのか診断を受けることです。というのは、毎年、この時期に来院する患者さんの中には、“思い込み花粉症”の方が結構いるからです。花粉症だと思っていたら鼻の真ん中にある軟骨が曲がっている鼻中隔湾曲症だったり、副鼻腔(びくう)炎やポリープ(はなたけ)があったり、まれではありますががんが見つかったりということもあります。花粉症でない場合には当然その治療法も変わってきます。
そもそも花粉症とは、過剰に免疫機能が働くことによるアレルギー反応です。私たちの体には、鼻や口の中にウイルスや菌のような外敵が入ってきたら、くしゃみや鼻水で外へ出そうとし、鼻を詰まらせてそれ以上入って来ないようにする免疫機構が備わっています。花粉をウイルスと同じような有害な外敵と体が勘違いして免疫機能が過剰に働くために、わずらわしい症状が出るのがこの病気です。いつでも誰でもなる可能性があるので、今まで花粉症と無縁だった人も決して油断はできません。
明日からでも始められる治療法
治療は、アレルギー反応を抑える抗ヒスタミン薬の内服が中心です。症状に合わせて点鼻薬や目薬も使うと症状がかなり抑えられます。本来は花粉が飛び始めたころから、それが無理なら少しでも症状が出だしたら治療を始めたほうが、つらい花粉シーズンを楽に乗り切れます。
以前は、抗ヒスタミン薬を飲むと眠くなるのが難点でしたが、現在は眠くなりにくい第2世代の薬を使うことが多くなっています。服薬回数は1日1回か2回が一般的です。市販薬でも、眠くなりにくく医師の処方薬と同じ量の抗ヒスタミン薬が売られています。ただ、医療用と同じ量の市販薬は非常に高価です。できれば耳鼻咽喉科を受診して、きちんと診断を受けてから、症状や生活スタイルに合わせた薬を処方してもらったほうがいいのではないでしょうか。
オススメは鼻マスクにゴーグル 症状の悪化を防ぐセルフケア
花粉症対策ではセルフケアも重要です。既に実践している人も多いと思いますが、外出時にはマスクとメガネをして、できる限り花粉を体内に入れないようにしましょう。仕事の関係で一般的なマスクができない人には、鼻マスク(鼻栓)がお勧めです。鼻の穴に直接入れて花粉の侵入を防ぐマスクで、洗えるものです。メガネは目の横からの花粉の侵入を防ぐためには、ゴーグルタイプが最適ですが、サングラスや普通のメガネで代用する手もあります。
この時期は空気が乾燥しているので、加湿器などを使って室内の湿度を60%くらいに保ち、花粉の浮遊を防ぎましょう。ほこりの影響で症状がひどくなる人も多いので空気清浄機能がついたタイプのものもお勧めです。室内の花粉やほこりの飛散を減らすために掃除をこまめにするのも重要ですが、そのときもマスクとメガネは必ず着用しましょう。
お酒やスパイスは注意 口紅やマスカラも控えめに
花粉が飛散しているスギ=岡山市で2013年3月4日、石井尚撮影 花粉が飛散しているスギ=岡山市で2013年3月4日、石井尚撮影
それから、飲酒や香辛料の強い食べ物は症状を悪化させやすいので、この時期は控えめにすることも大切です。ストレスの多い人や不規則な生活、睡眠不足も自律神経のバランスを崩し症状悪化につながります。さらに、化粧をすると花粉が顔に付着しやすいので、特にグロスタイプの口紅やマスカラなどは控えたほうがよさそうです。
残念ながら、これを食べたら花粉症が治るというものはありません。腸内細菌を整えると過剰な免疫反応が抑えられ花粉症が改善するという研究結果も出ていますが、ヨーグルトを食べただけで花粉症が治ったという患者さんには出会った経験がありません。
一方、少し汗をかく程度の有酸素運動は、花粉症の症状の悪化を防ぐのでウオーキングやジョギングを日常生活の中に取り入れるとよいでしょう。昼前後、夕方の日没前は大量の花粉が飛散しますから、その時間帯は極力避けて行うことをおすすめします。環境省や気象庁の花粉情報サイトをチェックし、飛散量の多い地域への旅行や遠出は控えましょう。
完治も期待できる「舌下免疫療法」
中長期的な戦略としてはスギ花粉の飛散が終わった5月以降に、次のシーズンに備えてレーザー治療を受ける方法もあります。鼻の粘膜の一部にレーザーを照射し、花粉によるアレルギー反応が起こりにくくする治療法で、日帰りで受けられます。ただし、レーザー治療は根本的に花粉症を治すわけではありません。効果の持続期間には個人差があるものの、少なくとも2〜3年後の花粉症シーズンにはまた元のような症状が出ます。
完治が期待できるのは、舌下免疫療法です。これは減感作療法とも呼ばれます。スギ花粉エキス「シダトレン」を毎日1回舌の下にたらし、アレルギー反応を弱めていく治療法です。以前は注射による免疫療法が中心でしたが、2014年10月からシダトレンが保険適用になり、痛い思いをせずに自宅で簡単に行えるようになりました。
この治療は初めてお受けになる場合、スギ花粉が飛散していない6月〜12月までに開始し、3〜5年間続ける必要があります。対象はスギ花粉症の患者さんで、ヒノキやブタクサなど他のアレルギーには対応していません。国内での臨床試験のデータによると、3年間使用し続けた場合、7〜8割の方に有効であったという報告があります。まれに急性のアレルギー症状、アナフィラキシーショックを起こす危険があり、効果が出ない人がいることも知っておきましょう。毎日続けるのは大変だと思うかもしれませんが、朝、歯を磨く習慣がある人が多いので、その後に花粉エキスを滴下すれば難なく続けられます。実は私自身もスギ花粉症で舌下免疫療法を受けていますが、習慣になってしまえば意外と続けるのは苦ではないものです。味も甘いので悪くないですよ。舌下免疫療法を受けられる医療機関は、鳥居薬品のサイトで検索できます。
自分にあった治療法と対処法を医師と相談し選んでもらい、つらい症状を軽減し、できるだけ快適に花粉症シーズンを乗り切っていきましょう。
【漢方併用で花粉症薬の効果アップ】
引用元:
「今すぐ対策」と「完治目標」 花粉症治療の両輪を知る(毎日新聞)