皆さんにとって、アンチエイジングはとても関心が高いところだと思います。本当に効くかはさておき、アンチエイジングに効く薬と称して、いろいろなものが世の中に出回っています。では、妊娠しやすさ(妊孕性)を維持すること、すなわち妊孕性に関するアンチエイジングの方法はあるのでしょうか?

 以前にもお話ししたように、卵子の数は年齢を重ねるとともに減ります。また、卵子の質も低くなり、不妊になったり妊娠しても流産が増えたりして、妊娠中や分娩(ぶんべん)時のトラブルが増えやすいことなどをお話ししてきました。

 こういうと、妊娠しやすさを維持することは無理なように聞こえてしまうかもしれませんが、注意していただくことで、していない人よりも、早く妊娠を達成できることがあります。端的にいえば健康を維持することなのですが、実行できることはいろいろあります。

 第一に、健康診断を定期的に受けることです。前回「がん治療の前に卵子・胚・卵巣の凍結を」<http://www.asahi.com/articles/SDI201602179389.html>でも述べたように、出産や子育ての時期に多いがんは乳がんと子宮がんです。毎年がん検診を受け、必要な場合は精密検査も受けてください。がんの治療を受けながら妊娠・出産に臨むのは難しいので、早期に発見し、治療しておくことが大切です。

 第二にHPVワクチンの予防接種です。このワクチンは子宮頸(けい)がんの約80%以上を予防することができます。日本はまだまだ、子宮がん検診率が低く、ワクチンによる予防効果が高い現状があります。しかし、ご存じのように、副反応を心配されておられる方もいます。これに対してWHOをはじめ、日本産科婦人科学会などの日本の関連学会は、ワクチンで懸念されている副反応との関連性は薄く、子宮頸がんの予防効果が明らかなことから、予防接種を推進しようと考えています。皆さんもいろいろな情報を得て、自ら考えてみてください。

 第三に、ピルの使用です。これは避妊薬で、意図しない妊娠や中絶を防ぎ、子宮やこころのダメージを防ぎます。そして、望んで妊娠しようとした時に、子宮を妊娠しやすい状態に保つことができます。

 また、ピルにはほかにも副効用があります。それは、子宮内膜症の発症を予防する効果です。子宮内膜症は不妊症の原因の一位を占めるぐらい近年増加しています。増加要因として晩産化があげられており、年齢が高いほど、子宮内膜症を発症している方が多いのです。ピルはその発症を抑える効果があるので、もし、妊娠を後に延ばすことを考えておられる方でしたら、ピルの服用も考慮してもよいかもしれません。しかし、ピルにも血栓症という副作用がありますので、医師に相談してから服用することをお勧めします。

 第四に、体重のコントロールです。体重が重すぎても、軽すぎても、排卵がうまくいかなくなるといった問題があります。また、妊娠できたとしても、妊娠中や出産時に妊娠高血圧症候群や難産などのリスクが増え、生まれる児にもリスクが増えます。母体が太りすぎの場合では巨大児や先天異常のリスクが増えます。また、母体がやせすぎでも、出生児が低体重になりやすく、以前お話ししたように、成人してから肥満や高血圧などになりやすくなります。

 一般的なアンチエイジングで卵子の数や質を維持するのは困難ですが、体を健康に保つよう注意することを通して、いざというときに妊娠しやすい状態にしておくことは可能ですし、とても大切なことです。ぜひ、取り組んでいただければと思います。



引用元:
妊娠しやすさを維持するための四つのひけつ(朝日新聞)