低出生体重児の消化管機能障害に関する疫学調査を行っている厚生労働科学研究の研究班(代表=奥山宏臣・大阪大大学院医学系研究科教授)は、出生体重が1500グラム未満の極低出生体重児の消化管機能障害診療ガイドライン案をまとめた。この分野でのガイドライン作成は初めてだという。【新井哉】

 周産期医療の進歩で出生体重が2500グラム未満の低出生体重児の救命率は改善傾向となっている。しかし、極低出生体重児は、臓器の未熟性に起因する合併症が課題となっている。特に合併症の消化管機能障害については、発症の原因は明らかになっておらず、有効な予防法や治療法が確立されていない。

 ガイドライン案では、消化管機能障害が「生命予後だけでなく長期予後を左右する重要な因子となっている」と指摘。しかし、粘膜の防護機構が破たんして腸管に壊死性の変化が生じる壊死性腸炎を除く疾患については、疾患の概念のコンセンサスが得られておらず、これまでは極低出生体重児の消化管機能障害のガイドラインがなかったという。

 こうした状況を踏まえ、ガイドライン案には、壊死性腸炎に加え、発症の早期には血液検査で炎症所見が認められない「局限性腸穿孔」などの基本的な特徴を記載している。

 また、クリニカルクエスチョン(臨床的課題)では、極低出生体重児の消化管機能障害発症の予防に母乳を投与する有効性についても言及。「消化管機能障害とりわけ壊死性腸炎発症を低下するエビデンスがあるため、母乳投与を行うことを提案する」との推奨文を掲載している。

 一方、グリセリン浣腸やガストログラフィン注腸については「消化管機能障害発症予防の有効性は不明」としている。研究班ではガイドライン案のパブリックコメントを29日まで募集している。

引用元:
極低出生体重児、消化管障害の診療方法は?- 厚労科研の研究班がガイドライン案 (キャリアブレイン)