将来の出産に備え、独身だった41歳の時に自分の卵子を凍結保存した大阪府内の女性看護師(44)が昨年、その卵子で女児を出産したことが分かった。がん治療など医学的な理由で卵子を凍結し、妊娠・出産した例はあるが、仕事など社会的理由を背景にしたケースが確認されたのは初めてとみられる。


<44歳女性、仕事と両立難しく 「温かい家庭、望み」> .

<晩産化進む東京 広がる卵子凍結 仕事優先、苦悩する女性> .
 晩婚化が進み、高齢になってからの出産や「卵子の老化」による不妊への関心が高まる一方、日本産科婦人科学会は健康な女性が社会的な理由から実施する卵子凍結を「推奨しない」としている。

 女性は30代後半から、大阪市内の2カ所のクリニックで計十数個の卵子を凍結保存した。仕事が忙しく、結婚の予定は当時なかったが「どうしても子どもがほしくて、自然妊娠を待つような悠長なことはできないと考えた」という。

 その後、今の夫(42)と出会い、2年前に結婚した。夫の理解も得られ、すぐに卵子を解凍して精子を注入する顕微授精(体外受精)を実施。昨年初夏に女児が生まれた。

 卵子は壊れやすく、凍結保存は困難だったが、1990年代後半に技術が改良されて普及し始めた。しかし健康保険は適用されないため、多額の費用がかかる。女性の場合は総額数百万円で、1回の施術で50万円かかることもあったという。

 女性の卵子を凍結した大阪市のクリニック「オーク住吉産婦人科」によると、クリニックでは2010年から健康な女性の卵子凍結を開始し、昨年末までにこの女性を含む229人の卵子を凍結保存した。このうち17人が体外受精をしたが、出産に至ったのはこの女性だけだった。

 日本産科婦人科学会は昨年6月、健康な女性の卵子凍結について(1)卵巣出血や感染症などが起きる恐れがある(2)受精卵や胎児への影響が不明(3)将来の妊娠・出産を保証できない−−などとして「推奨しない」とする文書をまとめている。一方、日本生殖医学会は13年に「40歳以上は推奨しない」などの条件付きで容認している。【中西拓司】


引用元:
卵子凍結出産 大阪・44歳健康女性、初のケースか(毎日新聞)